第17話
しばらく川沿いを歩くと見えてきた光景に、俺は思わず感動してしまった。
辺り一面の水田だ。
稲穂がものすごい広範囲に広がっていた。
あれだ、都会で生まれ育った俺なんかは小さいころに学校でアサガオの観察とか、小さな花壇の世話とか、その程度しか自然に触れてことがない!
それが見てみろ。目の前に田んぼが広がっている!
「おおぉ・・・・・」
「そんなに興奮してどうしたケンジ」
「なあヒデヲ! この稲はもうじき収穫か!」
俺は食い気味に訊ねた。
「なんつーか、すごい力の入れようだな。残念ながらもう少し先だ」
「そうなのか。じゃあ今日の仕事はこの田んぼ関係なのか?」
「まぁ直接関係はしていないが、似たようなもんだ。こっちだこっち」
「こっちこっちー!」
メアとヒデヲに手招きされ付いていく。水田の畦道を3人で歩いていく。
すごい、どっちを向いてもイネイネイネイイネ!
こいつは、収穫するのに骨が折れそうだぜ。
やがて水田の終わりまで到達すると、景色は草原の平野に戻った。
「あれが目的地だ」
「でかいな」
指を指した少し先に大きな建物があった。
高さはあまりないがかなり大きい。納屋なのか?
「村の保管庫だ。農具だとかこの田んぼで取れた米とか、農作物の貯蔵をしている保管倉庫ってわけだ。で、少し離れているが保管庫の向かいに見えるのは飼育小屋だ。あそこで家畜を飼っている。どちらも村の貴重な食糧源なのさ」
ヒデヲが順番に指を差しつつ説明してくれる。
「この村ではみんなで家畜や田畑の世話をする。そんで各家庭に食料を分配したり、働きに応じて報酬を分配するんだ。ひとりは皆のためにってな」
「不公平とか出ないのか?」
「まあそこはうまくやってくれている。主に、ジロウの奥さんがな」
生活を村の住人一丸となって自給自足のやりくりしているとは……改めて田舎というか集落であることを実感する。実際ここまでものすごい肌で感じていたが。
「さて、じゃあちょっとここで待っててくれ」
「ああ、わかった」
保管庫の入り口まで来ると、俺とメアを残してヒデヲは建物へと入っていく。
倉庫周辺には木材が沢山あった。家を作るために切り出した木だろうか。
そして近くには作業台のような机があり。横には両刃の斧が倒れている。
パッと見やや小ぶりだが、よく見ると細かな模様が刻んであり豪華な作りになっているように見受けられる。これも大門同様に、職人があつらえたものなのだろうか。
「あーつーかーれーたー」
メアはすぐそばにある丸太の山によじ登って座り、足をブラブラし始めた。
そりゃそうだ。ここまでそれなりに歩いてきたからな。
小さな子にとっては大変だったろうに。
今日もメアは笑顔を絶やさない。本当に可愛らしいな。
そんな事を考えてる間にすぐヒデヲが戻ってきた。大きな木箱を両腕で抱えている。
「これが、今日使う道具だ」
「おう、どれどれ」
ヒデヲが木箱を机に置き、蓋を開ける。
俺はその中を覗き込んだ。
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