「そうだ、自分はこういう物語が好きだったんだ」と、思い出させてくれた秀作。
国と国、貴族間の派閥、複雑な人物相関が描き出す、壮大な人間ドラマ。剣と権力と策謀で繰り広げられる世界観は、架空の世界とはいえ、どこかの国の実在の戦記の一部を見ているかのよう。
読むのが難しそう、という印象をこのレビューで与えてしまったら申し訳ないのですが、読み始めるとスルスルと、誰と誰がどうつながっているのかが、発生する出来事でさりげなく開示され、会話を読んでいれば過去に何があり、それによって何が起こったのか理解できる見事な文章力。
心理描写が丁寧ですばらしく、気づけば登場人物の敵味方関係なく魅力を感じている自分がいました。相手には相手側の、主人公側には主人公側の思惑や正義があるんですね。
特徴ある各キャラの中でもやはり、特筆すべきは、主人公ヴィーの人間性と魅力でしょうか。見た目や物腰、聖人と見紛う雰囲気を醸し出しつつ、現実的な思考力、上に立つものとしての冷徹な行動力、品が良いのにカジュアルな部分もあったり、人間らしい弱さと悩みも合わせ持っていて、彼の行動のひとつひとつ、次の一手をどうするのか気になって読む手が止まりませんでした。
彼が拾ったディルの存在が、よりヴィーの魅力を際立たせていて、人間性や人を惹きつけるひとつひとつの仕草の大ファンに。
護衛的存在として傍にいるリエール卿との小気味良いやり取りや、敵側の企み部分など、会話だけでも読み応えがあります。
どのシーンを切り取っても面白く、流し読みなどぜすに腰を据えてじっくり読みたい作品です。
カンファー王国のはずれの、山中で。
身なりの良い美少年、ヴィーが、盗賊にとっつかまって、縛り上げられていた。
彼は、淡い金髪で、とても上品だ。
その彼を、物陰から、そっとうかがう、十歳の男の子がいる。
身体は痩せ、殴られたあとがある。
盗賊どもにつかまって、下働きにこき使われているのだ。
「……その傷、先ほど出ていった男たちにやられたのですか?」
ヴィーは、男の子にそっと話しかける。
それが、お互いにとって、どんなに意味のある、運命的な出会いであるか。
この時はまだ、知る由もなく……。
精神の強さを持つ、訳ありのヴィー。
男の子を襲う、数奇な運命。
人の心の強さ、葛藤が、抜き差しならない政治劇、綿密な国・経済の設定に支えられ、展開していきます。
読み応えがたっぷり。
ヴィーと男の子の間の、心のつながりに胸が熱くなります。
そしてあとからでてくる、一癖も二癖もある、黒騎士がかっこいい!
主従のやりとりに、皮肉が効いていて、非常に面白いです。
一話が10000字くらいあり、心理描写がきめ細やか。物語の世界にひたりながら、読書していただきたいですね。
おすすめですよ。
ぜひ、ご一読を!
ここにあるたくさんのレビューをご覧になると分かる通り、読者の皆様に支持され絶賛されている素敵な作品です
少しずつ紐解かれていく物語なので、あまり先入観なしで、小説が進むままに読むのがおすすめです
端正で無駄のない筆運びで、中世の空気感のある独特の世界に誘われます
読後感はとても爽やかです
中世に近い文化がある異世界もの
魔法など超常の力の類は登場しないけれど、その分、人と人とのつながりが丁寧に書かれており、心に沁みます
伏線の張り方が巧みなので、読書でそれを見つけていく喜びもあります
番外編『アドベントカレンダー2023 〜親愛なる我が従弟殿へ〜』と合わせて読むと世界観が補完され、もう一つ世界の奥に踏み込むことができます
こちらもおすすめです
旅の途中、賊に捕らわれてしまった謎の少年ヴィーと、そこで出会った孤児のディル。ヴィーはディルが一人で生きていけるようになるまで手助けすることを持ち掛け行動を共にすることになるが、実はディルはもっと大きな別の権力に命を狙われていた。
「約束を、絶対に忘れないで」
その言葉を胸に、分かれた二人の運命は――?
しっかりとした落ち着いた雰囲気ながら、丁寧な表現でどっぷりと世界に入り込める文章です。物騒な展開でも会話のテンポの良さなのか暗くなりすぎず、ぐいぐいと読み進められます。
登場人物たちもみんな魅力的!主役の二人もさることながら、脇役のオジサマたちがみんな良い味を出していてお気に入りです。
1章あたりがじっくりと描かれているため腰を据えて読める方向けかも。でもその分読み応えはたっぷりです。
絶妙に謎を残しながら進む物語。その塩梅が見事で、続きが気になって仕方がないですが、序盤の謎は明らかになったところです。読むなら今がおすすめ!
第12話まで読了いたしました。
あちらこちらに伏線が張り巡らされており、読み進めたい欲求が止まりません。
主人公の一人・ヴィーの物腰柔らかい口調が特に好きです。16歳にもかかわらず、達観したその様が、過去にあった出来事を匂わせており、早くその時のことを知りたい、その場面を読みたいと思わされます。
また、もう一人の主人公・ディルは少年らしく迂闊な面がある一方、その経験から自分の利になるよう考え行動できる聡明さを兼ね備えており、とても魅力的です。
自分を拾ったヴィーの言葉を信じ、孤独に負けないよう奮闘する彼を応援せずにはいられません。
まだ、物語は序盤で、ヴィーのもつ「力」、各権力者たちの思惑、国同士の関係性などはこれからみえてくることでしょう。
書籍として出版されていてもおかしくない、文章力と世界観を兼ね備えた優作です。