第7話 彼女の秘密
放課後。教室が3人になるまで、俺たちの間に会話はなかった。
「.......それで話って何かな?.......河野君だよね?」
「あぁ。わざわざ悪いな。ただ一つだけ、確認したいことがあってな。」
色瀬は押し黙っていた。
俺は事の経緯を話始めた。
「優衣から頼まれたんだ。毎週木曜日になると親友の様子がおかしい。もし、何か隠しているなら力になりたいとな。」
彼女は黙ったままだ。
「俺は最初、普段答えられる質問に答えれない。
昨日の会話を細部まで覚えていない。この2点から色瀬は双子で木曜日に入れ替わっているのでは。と考えた。でも優衣は色瀬が嘘をついているかどうか分かるらしい。そして、その結果嘘をついていないと分かった。ここが一番事件をややこしくしたポイントだった。」
ここで話を切ると、彼女を見つめた。 彼女は下を向いていたが、しばらくしてこちらを向いた。
「.......続けて。」
「.......わかった。そして、今日だ。朝から色瀬を観察していたが、なんにも分からなかった。午前中までは優衣が間違っていて、やはり双子なんじゃないのか。と思っていた。だが、ヒントはあった。たまたま色瀬の携帯の画面が見えて、そこに1週間おきに印がされてあったことだ。もちろん故意ではなかったんだ。その点は本当に申し訳ない。」
俺は頭を下げた。
「別に全然いいですよ。頭を上げてください。さぁ続きをどうぞ。」
「.......あぁ。それで、午前中何も思いつかなかったから中庭に出て、気分転換しようとした。だが、あそこには初めて行ったが、四方八方から雑談が聞こえてくる。うるさくて仕方なかった。だけど、その中のとある雑談にヒントが隠されていた。」
「.......雑談の中にですか?」
「蓮どういうこと?」
「それはなぞなぞだった。そこで俺は気づいた。この問題はなぞなぞだったんだとね。」
そこまで言うと、俺はペットボトルの水を一口飲んだ。長々と喋れると疲れる。よし、あと一息だ。
「小学校受験などにも出題された、こんななぞなぞ知ってるか?・両親も同じで、生年月日も一緒なのに2人は双子ではないといいます。何故でしょう?・優衣、もう分かった?」
「え、もしかして...........」
「色瀬 空は三つ子だっていう事?」
「そうゆうことだ。これで、1週間おきについた、印の謎も解けた。空ではない2人が1週間ごとに入れ替わって、木曜日の授業に出ていたんだ。つまり、あの印は、自分が授業に出る日だったんだ。」
「よく、分かりましたね。全部、河野君の通りです。」
「.......じゃあ、あなたは?」
優衣が色瀬 某にたずねた。
「私は次女の色瀬 海です。ちなみにもう1人は色瀬 光といいます。」
「.......そうだったんだね。」
優衣は彼女を真っ直ぐと捉えてそう言った。
俺の推測は当たっていた。でも、まだ分からないことが一つあった。
「別に責める訳では無いが、何故こんなことをしているんだ?」
色瀬 海は一呼吸とってから答えた。
「.......私と光は幼い頃から病弱でした。今は高校に通っていません。それでも、最近は二人とも調子が良い日も多く、お医者様からも段々回復に向かってきていると言われました。ですが、まだ高校に通えるほどではありません。私と光は高校に行きたいと思う様になりました。そこで、姉こと空がこの作戦を提案したのです。」
「そういうことだったのか.......。」
「どうか、お願いです。このことは2人だけの秘密にして貰えませんか。」
「もちろんだよ!」
優衣は食い気味に答える。
「あぁ。約束する。」
俺は色瀬達がやっている事が、悪いことなんて思わない。
「.......本当にありがとうございます。入れ替わりのことはこれからどうするか3人で話合いたいと思います。」
「もし続けるんだったら私、陰ながらサポートするね!蓮もね!」
こんな会話が何回か続いて、色瀬 海は帰った。
教室から出る彼女は笑顔だったと思う。
「それじゃあ.......私たちも帰ろっか。」
「そうだな」
帰り道では、特に何も話さなかったし、何も起こらなかった。
.......だけど、これだけは言っておこう。
3本の花がお互いを支えながら綺麗に咲いていた。
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