『お嬢様!俺の青春リベンジにお付き合い下さい!?』超ビンボー学生の俺。学園一の令嬢を騙して資産を奪おうとしたら、彼女もボロアパートでパンの耳をかじる偽物だったんですが!?〜人生逆転ラブコメ!?〜

空飛ぶチキンと愉快な仲間達

プロローグ

 「貧乏人は、石でも食ってろよ!」

 幼い頃、近所の子供に投げつけられた石の痛みなんて、神月悠人はもう忘れてしまった。

 本当に痛かったのは、その子供の親が、悠人の母に札束を投げつけながら言い放った言葉だ。

 「これで示談でいいわよね? 貧乏人には大金でしょう?」

 母は、泥で汚れた地面に散らばった一万円札を、泣きながら、それでも一枚一枚丁寧に拾い集めていた。

 その時、悠人の中で何かが壊れた。

 ──ああ、そうか。この世界は、金が全てなんだ。

 時は流れ、悠人は中学生になった。

 学年トップ? そんなものは当たり前だ。

 「努力」なんて言葉は、持たざる者が唯一使える武器の名前でしかない。

 悠人は死に物狂いで勉強し、家計を助けるための内職をこなし、母を支えてきた。

 だけど、神様とやらはどこまでも不公平だった。

 母は今、真っ白で無機質な病室に横たわっている。

 『灰化症候群(アッシュ・シンドローム)』。

 かつては絶望の病と言われたが、今は違う。

 「お金さえあれば、助かる病気」になったのだ。

 「……悠人……ごめんね。お母さん、もう……いいのよ……」

 酸素マスクの向こう側、母の肌は病のせいで不自然なほど白い。

 維持費だけで月数百万円。完治させるための海外手術には、最低でも数億円が必要だと言われた。

 普通の高校生が逆立ちしたって稼げる額じゃない。

 だから、母は「自分の命」に絶望的な安値をつけ、それを諦めた。

 「悠人……どんなに家が貧乏でも……隣に大切な人がいる事が……本当の幸せよ……」

 死にかけの母が悠人の手を握り、無理に笑う。

 ……ふざけるな。

 自分が隣にいるだけでいい?

 そのまま母が死ぬのを見届けろというのか?

 そんなの「幸せ」でもなんでもない。ただの「敗北」だ。

 母はまだ、生きている。

 でも、その命の灯火は、口座の残高がゼロになった瞬間に消える。

 悠人は届いたばかりの合格通知を、指が白くなるほど握りつぶした。

 【私立青南美浜学園・特待生】

 日本中の資産家の令嬢・御曹司が集まる、金の掃き溜め。

 彼らが一晩の遊びに使い捨てる金。乗り回す外車の維持費。ブランド品のバッグ。

 その「端金」さえあれば、母の命は買い戻せる。

 憎い。

 なんの対価も払わずに、親の七光りで生きている奴らが憎い。

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い──。

 だから、悠人は生まれ変わる。

 新たな自分に。悪魔に魂を売った捕食者に。

 神月悠人。

 愛なんて、もう捨てた。

 彼に必要なのは、母を救うための「数字」だけだ。

 この青南美浜学園で、『青春を復讐に使って人生をリベンジ』してやる。



 「お嬢様、俺の青春リベンジにお付き合い下さい──」



 四畳間のボロアパート。

 隙間風が吹き抜ける中で、悠人は完璧な偽物の笑顔を鏡に向かって作った。

 明日、この「地獄」への門を叩く。




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