第19話


アキは私をよく知っている。


首筋にそっとキスをして、その後すぐに唇に唇を押し付けた。

私の力が入らなくなることを知っていたのだ。


アキの手のひらは冷たくて、私の頭を優しく包む。

そして髪の毛を優しくかき上げながら、乱しながら撫でる。

私はまんまとアキにのまれていく。

アキの舌が少しだけ入ってきて、私の舌に重なった。

なぞるように舌は動き、水分を奪っていく。

アキは私の腰をもう片方の手で触れた。



「あ、ごめん。」

アキが急に離れた。

「え・・・」


アキのポケットで携帯が鳴っていた。

アキは携帯を取り出すために離れ、そして電話を取るために更に離れた。

5m、、、10m、、、。



私はアキから離れなければいけない。

離れる、会わない、、そう決めていたのに。

今、アキが離れた瞬間まではそれを忘れていた。

というか、なにも考えられなくなっていた。


アキが電話する声は聞こえなかった。


私はアキから逃げるようにまた歩き始めた。

アキが追ってきたら、その時は走ろう、と決めていた。


だが、アキは追っては来なかった。



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