同じ姿と同じ声をした二人。

 トモカヅキは首を傾げ、知哉ともやは微笑みを浮かべて向かい合う。

「帰りたくないんでしょ? だったら帰りたくなるまでここに居ればいいじゃん」

 微笑みながら手を差し出してくる知哉ともやにトモカヅキは困惑していた。

「駄目だよ、ことわりは絶対だ。僕達のことわりは人の欲に漬け込んで人を喰う事、でも僕には君を喰らってしまうことは出来ない。ただでさえことわりを破っているのにさらに破ることになる。それでも波が呼ぶから帰らないと」

「わかんないなぁ」

 トモカヅキの言葉を聞いていた知哉ともやはため息交じりに腕を組んだ。

ことわりって言ってみれば規則みたいなものだろ? それも自分で決めた事じゃなくって他で決めた事。確かに決められたことを守るのは当然だし破っちゃだめだけど、その規則に自分が違和感を覚えているなら破ってみるのもいいと思うんだ。それで罰を受けるっていうならどうして自分がそうしたのかを説明すればいいし、それでもわかってくれなきゃそんな規則のあるところやめちゃえばいい。俺は君が悪いことをしているようには思わないからなぁ。留まるために俺の体が必要だっていうなら俺は別にかまわないよ。こうやって二つが一つの場所に居るけど何も起こらないし支障はないんじゃないかな。あぁ、でも規則の相手にちゃんと説明できずただ何となくって破っちゃうのは駄目だし、本当に悪いことなら罰は受けなきゃダメかなって思うけどね」

 笑って言う知哉ともやの言葉は、アヤカシモノであるトモカヅキには驚き以外の何物でもない。

 人を喰い襲う為に忌み嫌われるのがアヤカシモノ。

 しかしそれも、アヤカシモノとして生まれた自分たちに与えられたことわりの中で生きているからこそ。

 アヤカシモノの中にもちゃんとことわりはあり、やたらと誰かれかまわず襲っている訳では無い。

 しかし人は襲われたという事実だけを見て忌み嫌う。海に来る人々の笑い声を聞くたびにトモカヅキは何故自分はアヤカシモノとして生まれてしまったのかと思い悩んでいた。

 トモカヅキの理の中で生きるモノたちが抱くことのない疑問を抱き一人思い悩んでいる時、一人の少年に出会う。

「どうしたの? 苦しいの? 」

 そう聞いてきた少年こそ知哉ともやであり、トモカヅキが人という物に興味を持った始まりであった。

「やっぱり君は変わっているね」

 小さく笑ってそう言うトモカヅキにむっと口を歪めながら「心配してやっているのに」と文句を言う知哉ともや

 その知哉ともやに手を差出しトモカヅキは言う。

「もうしばらくだけ、君の中に居させてもらうよ」

「そっか、たまには交代してくれる? 」

「そう言って面倒だけを僕に押し付けるのは無しだからね」

「ちぇ。楽しい事だけやりたいのになぁ」

「それは僕だって同じだからね」

 二人は肩をすぼめて吹き出し、大きく笑って白い景色に溶け込んでいった。

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