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「まず、百目鬼どめきがこの地を手に入れたい理由は龍穴があるというだけではない。どちらかといえば、本来の目的の最中に龍穴の存在を見つけて目を付けたという流れだ」

「本来の目的って。百目鬼どめきが絡むと嫌な感じしかしないけど」

「その反応は正しいぞ。実際ろくなことを考えない連中が脈々とその性質を受け継いで存在しているからな。ありとあらゆる呪術を会得し、己の物としてきた百目鬼どめきは欲しくなった、全ての力を持つ神様という地位をな。それが百目鬼どめきの本来の目的だ」

「人間如きが神になろうと言うのか。愚かな」

百目鬼どめき宇受賣うぶめの血が入っているからそう思っても仕方ないのかもしれないが、まぁ、分相応には生きていけない性格なのだろう。そうして連中が目を付けたのがこの山。龍穴が生まれる前よりこの地は霊山としての力が渦巻いていた。この場所ならば他の場所よりもずっと神を呼び出しやすく、確実に最高神を呼び出すことも出来る。と、考えたわけだ。ある意味、龍穴ができたんだから、その考えは当たっていたことになるが。かなり昔から瑞葉みずはだけでなく百目鬼どめきの一族がこの地を狙っていた」

「それは我等とて知っておる。みことという特殊な存在が生まれ出る前から百目鬼どめきの連中はこの地を狙い、それに対してさかき一族は命を懸けてこの地を護ろうとしておったからな。我等も時には力を貸したが、もともと現世うつつよの物ではない我等には眷属を使うしかなくその力、半分も貸してやることは出来なんだ。みことが生まれ出てからは別だがな」

「当然私が生まれてからは百目鬼どめきには相応の報いを受けてもらった。故に今この地を手に入れようとしているのは瑞葉みずは一人だろう。しかし長い争いの中で百目鬼どめきはこの地に忌まわしい方陣を作り上げた。もっとも、今それを使おうなどと考えているのも瑞葉みずはぐらいだろうがな。その方陣というのは最後に百目鬼どめきの血が方陣の中央、つまりこの香御堂こうみどうがある霊山に入れば完成し全ての情報を書き換える乗っ取りの方陣。この山の管理者という立場は我が一族が神から与えられたもの、それを書き換える。例え使おうと企んでいるのが瑞葉みずはであり、そう思っていない百目鬼どめきの血の者がこの山に入っても発動する。だから私はこの山全体に強力な、百目鬼どめきの血を持つ者だけが踏み込むことのできない結界を張った。情けない事に気付いた時には方陣のほとんどが完成していて結界でしか防ぐことができない。完成前ならばいろいろ手も打てたし、違っただろうが」

「仕方ないんじゃない? その時は確か神子みこちゃんの両親が亡くなっているでしょ。百目鬼どめきのせいっていってもいい感じで」

 廉然漣れんぜんれんが言えば尊は大きなため息をついた。

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