辻堂久義
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新聞配達員として働いており、今日は働き出してから使っていなかった有給を全て使ってこの宿にやって来た。
だが新聞配達をし始めて数か月、自信のあった体力が衰えたのか寝れば消えていた疲労感がどんなに睡眠を取ろうと消えることは無い。
初めの頃こそ慣れない職場で慣れない仕事をしているからだろうと軽く考えていたが、慣れてきても体の不調は続き、病院に行っても疲れているだけでしょうとはっきりしない診断。
一体自分はどうしたのだろうか、そしてこれからどうした物だろうと悩み、やっと見つけ採用して貰ったがこの仕事を続けていいものなのだろうかということまで考え始めていた。
駅の階段を上っただけで息切れをし、少し休憩とバス停のベンチに腰を下ろしていたそんな時、
「貴方、すっごく面白いわね」
と言い、あっという間に
一体何が何やら分からないまま車に乗せられて連れてこられたのは何処かもわからない森の中にある湖畔。振り返れば大きな鉄の門があって、ここはどうやら前庭の様だった。
言われるままに車を降り、湖畔から湖の真ん中にある一軒家に向かって伸びる橋を渡る。立派な玄関ドアがゆっくり静かに開いて中に入れば数名の使用人らしい服装をした人物に迎えられた。
こんな見たこともない大きな屋敷でこれだけの使用人に囲まれている金髪の女性はどこかのお嬢様ということだろうかと、自分とは全く違う世界に
「突っ立ってないで。こっちよ」
屋敷の中に入って、ただ呆然と辺りを見渡している
湖の真ん中に立っている建物は大きな二枚の玄関ドアがあり、中に入ればそこは広いホールになっている。
玄関ドアからホールをまっすぐ、目の前には階段があり、十三段ほど登った踊り場で左右に階段は分かれていた。
さらに階段を上った先、ホールを囲むようにある廊下から
新聞配達員として住み込みで働いている
「全く、どれだけ面白いの。アスラ、その男をこちらに連れてらっしゃい」
驚いたのは
成人してもう三年経とうかという自分の体格は決して人並み以下ではない。成人男性の平均を大きく上回るはずなのに小柄な女性が軽々と抱き上げ、しかもお伽噺に出てくるお姫様のように横抱きにして自分を運んでいるのだ。
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