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洗面に向かう途中、
綺麗に片づけられた、文机も何もない空間がそこには在り隣の部屋には誰もいない事が分かる。
それに今さらどうして自分を雇ったのかというのも気になったが、今気にしても仕方のない事だと洗面所の方へ再び歩き出す。
自宅にある洗面所よりもずいぶん広く、どこぞのホテルじゃないかと思うお洒落で機能的なシャンプードレッサーで頭から水を浴びて顔を洗い、未だぼんやりしている頭をはっきりさせた。
「それにしても、山の上だっていうのに不便なところが何もない。うちより良い感じがする」
建物は誰が見ても古民家だろうと見当がつくほどに古く、同じように中庭にある池も苔むした景色が其処に在る。
しかし、建物内に置いてある電化製品や水回り、内装などは新しい物ばかり。新しくするなら建物も一緒に建て替えてしまえばいいのに、それが知哉の素直な感想だった。
顔を洗い洗面所を出て真っ直ぐ廊下を歩き台所の方へ。
システムキッチンの横にある和室には座卓があり、その上に日本的な朝食が並べられている。
朝食が米だったことは初めてで少々戸惑った。しかし朝から米というのも悪くはなく、初めての和食の朝食をあっという間に平らげる。
食事の最中に
「トランシーバーですか? 携帯電話ではなく?」
「これなら山の中で遭難してもすぐに私に連絡がつく」
「遭難って。そんなことがあり得る山なんですか?」
「お前が馬鹿みたいに敷地内を歩き回らねばそのような事態になることはないとは思うが、お前が歩き回らないと言う保証はないからな万が一の為だ。それに携帯電話は少々問題有りでつながらない時が多い」
「あぁ、山だから電波が入りにくいんですね」
「其れもある。ここには中継点が一つもないからな。だが、主な理由はここには電波を遮る存在と電波を嫌う連中が居るからだが、それが何かというのは今考えなくていい。ともかく分からないことがあれば自分で何とかしようとはせず、必ず私に連絡を取るように。小型で持ち運びにも困らないはずだ、絶対に忘れず肌身離さず持っておけ、良いな?」
怖いくらいの眼力でそう言った
「
「
今日は、習慣的に早起きをして居なかった上に、持ってきたスマホはいつの間にか電池がなくなっており目覚ましもない状態だった。
で寝坊をした
といっても、時間厳守の時間は主に食事の時間であり、それだけのことにやけにうるさく言うと
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