第61話 新しい職人さん

テルトがくたびれた様子で顔を出す。

「自転車、順調に売れてるようだね」

「…おかげさまで」

声にも力がない。

「人を雇って任せたら?ナントに指導させて。印刷機に集中したいんでしょう?」

「そうなんですが…」

職人にとって、自分のアイデアを形にするのは楽しい。根を詰めるのも分かるが、疲れ過ぎては頭が回らない。

「ちょっと休むだけで、だいぶ変わるから」

「はい…」

そしてテルトに頼みごと。

印刷機を作るのに付き合いのある、金属加工の職人の紹介。

「自分がやりたいんでしょうが、そんな顔してもダメ」

「はい…頼んできます」

諦めたのか肩を落とし、頼まれてくれる。いい子だ。


翌日、早速職人さんが顔を出してくれた。

「ガンバロウと申します。以後お見知りおきを」

ん?まんま名前?なんか呼ぶたび疲れそう。

「聖女様からお会いしたいとか、光栄の至りです」

「堅いことはナシでね」

紙を広げ、ざっくりと蒸気機関の説明をする。

ああ、やっぱり職人。目が輝いてる。




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