第30話 子供たち

愛でるほど好きでもないが、考え事するにはいいんで、中庭のベンチに座って花を眺めていた。

そこへ。

「僕ねー、自転車が欲しいんだぁ」

「ダメよ、あんな女に近づいちゃ」

「そうよ、下品なアバズレだってお父様もおっしゃってらしたわ」

ほうほう、下品なアバズレですか。

「若い男を連れて来いなんていう、どうしようもない女よ」

すうっと大きく息を吸って立ち上がる。ちょうど振り返った一番年上らしき少年と目が合ったが、かまわずかます。

「悪口は自己紹介ぃっ!」

「ひぃっ!」

「きゃあっ!」

「うわぁあん!」

「な、な、立ち聞きとか無礼でしょう!」

「立ち聞き?ドアどころか衝立も無いとこで、聞いてくださいとばかりに話してて?」

子供たちは五人。一番上の王太子、姫姫王子王子かな。確か17・16・14・10・4歳と聞いた。

「申し訳ありません、聖女様。妹たちが」「謝罪は本人がしないと意味ないのよ?」

そう言いながらしゃがんで、爆泣きの末の王子の頭を撫でる。

「驚かしちゃったねぇ、ごめんね」

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