地獄の中二病講座と魔力制御特訓って…
学園トーナメントまで、あと一週間。
凛、結衣、レナの三人は学園の訓練施設にこもり、猛特訓を開始した。
「いい? 魔法の威力は『魔力量 × 出力精度』で決まるの」
腕を組み、厳しい表情で講義を始めたのは結衣だった。彼女は医師を目指しているだけあって、魔法に関しても理論を重視するタイプだ。
「魔力量はその人の持っている総エネルギー量、出力精度はそのエネルギーをどれだけ無駄なく使えるかってことね」
「ふーん……なんか難しいな」
凛は床に座り込んで気の抜けた声を出した。
「ていうかさ、俺ってそのへん何も考えてないんだけど?」
「そう、それが問題なの!」
結衣はピシッと凛を指さす。
「凛は魔力が規格外に大きすぎるせいで、理屈抜きに最強になっちゃってる。でも、普通の人間はそうはいかないの。だから私たちは、精度を上げて戦わなきゃいけないのよ」
「なるほど……つまり?」
「つまり、私たちに魔力量を増やす秘訣を教えなさい!」
「は?」
凛はぽかんとした顔をしたが、すぐに何かを思い出して顔をしかめた。
「いや、それは……無理だな」
「なんで?」
「お前らには耐えられない」
凛は腕を組んでそっぽを向く。
「俺は昔から自分が特別な存在だって信じてた。闇の力に選ばれた戦士……封印されし魔剣の使い手……"運命に抗う者"……」
その瞬間、結衣とレナの表情がこわばった。
「……まさかとは思うけど」
「中二病のせいで最強になったの!?」
沈黙が流れた。
「………………まあ、そうなるな」
「嫌だあああああ!!!」
結衣は頭を抱えた。
「なんでそんな理由で歴代最高の魔力量になってるのよ!」
「知らねえよ! 気づいたらこうなってたんだよ!」
「ねえ、じゃあ私たちも中二病になれば魔力量が増えるの?」
レナが真剣な顔で聞くと、凛は全力で首を振った。
「やめろ!! この道に踏み込んだら戻れなくなるぞ!!」
「……とにかく! 私たちは中二病にならずに強くなる方法を探すの!」
結衣は強引に話を進めた。
「魔力を増やすのは長期的な課題として、まずは出力精度を高める練習をするわ!」
結衣が取り出したのは、小さなロウソクだった。
「これは……?」
「ロウソクの火を消さずに揺らす訓練よ。狙った場所に正確に魔力を流せるようになるには、こういう微調整が大事なの」
「なるほどね。やってみる!」
レナがさっそく挑戦する。魔力を指先に集中し、そっと風を送るように……
「――!」
ボンッ!
ロウソクが爆発した。
「ちょっと! 派手すぎ!」
「ご、ごめんなさい! 力加減が難しいですね……!」
レナがしょんぼりするのを見て、結衣は優しく頷いた。
「焦らなくていいわ。コツは呼吸を整えて、少しずつ力を調整すること。魔力は感情と直結してるから、リラックスするのも大事よ」
「ふむふむ……やってみます!」
レナは深呼吸をして再挑戦。少しずつ魔力を流し、今度はロウソクの火がわずかに揺れる程度に留めることができた。
「やりましたっ!」
「うん、その調子!」
一方、凛はロウソクの火をじっと見つめていた。
「……俺はどうすればいいんだ?」
「凛はいいの! 今さら精度とか言われても意味ないでしょ!?」
「まあ、確かに」
「次は詠唱強化よ!」
結衣が得意げに言う。
「詠唱? そんなのいるの?」
「いるわよ! 詠唱の完成度が高いほど、魔法の威力も増すの!」
「なるほど……じゃあ、具体的には?」
「例えば……」
結衣は目を閉じ、ゆっくりと手を掲げた。
「"生命の灯火よ、癒しの光となれ……『聖光癒泉(せいこうゆせん)』!"」
彼女の手のひらから、優しい光があふれ出し、凛とレナを包み込む。
「すごい……!」
「詠唱を強く意識することで、魔法の精度と威力が大きく変わるのよ」
「ふむ……レナもやってみろよ」
「え、私?」
「おう。なんかカッコいい感じで頼む」
「……えっと、じゃあ……」
レナは少し恥ずかしそうに目を閉じ、手を掲げた。
「"吹き荒れよ、烈風の刃……『嵐旋風(らんせんぷう)』!"」
すると、彼女の周囲に強烈な風が巻き起こり、訓練場の砂が舞い上がった。
「おお! なんかそれっぽい!」
「……うう、やっぱりちょっと恥ずかしい」
「恥ずかしがるな! むしろ誇れ!!」
「……それ、中二病の始まりじゃない?」
レナが鋭いツッコミを入れるが、凛は無視した。
一週間の特訓の結果——
結衣とレナは魔力の精度を大幅に向上!
詠唱の完成度も高まり、より強力な魔法を扱えるように!
……代償として、二人は少しずつ"中二病"に染まってきた!?
「ふふ……ついに私の力が覚醒しつつある……!」
「これが……"真の力"……」
「やめろおおおおお!! 俺の前で中二病を発動するなあああ!!!」
こうして、学園トーナメントへの準備は順調(?)に進んでいった——。
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