第37話

「さて、ここが例の湖か……」

「なんだか綺麗な場所だね。こんなところに本当に魔物が居るのか疑っちゃうぐらいに」

 朝の清々しい空気に覆われた湖畔。風もなく湖面は静かに青空を反射させている。

 魔物が出たと報告されているからか、俺達以外には誰も居ない。誰か居ても不審者だと思われないように、学院の制服を着用してきたのだが意味がなさそうだ。

「普段はデートスポットとして有名らしい。なんでも池の周りを二人で1周するたびに1年連れ添えると言われているらしく、ここで結婚式を挙げた夫婦が何周もするのが名物だそうだ」

 今朝宿屋の女将さんが教えてくれた。リゼは朝が弱いので、その時にはまだ寝ていた。

 俺も普段はよく寝坊とかするが、こういう普段と違う時は朝はすんなり起きられるんだよな。

「えぇ……ここ、結構広いよね?1周するだけでも骨が折れそうなのに」

「そうだな、元々は一日で何周もするんじゃなくてここを定期的に訪れてその時湖を一周していくようなペアはそれだけ仲が良く、長く連れ添うということなんだろうな」

 湖畔はかなり広く、一周5㎞以上はあるだろう。何周もするような場所じゃない。

 一周するだけでも長い道程を何度も共に出来るならば、それはその二人の相性の証左となる。

「噂は因果関係が逆になっちゃってるんだね。……ねぇヘイン、魔物を探すついでに一周しない?」

「ん?ああ、わかった。元からそのつもりだったからな」

 遠出してまで来た場所だ。一周ぐらいしないと勿体ない。魔物を探す為にもやる必要があるしな。

「えぇ!?う、うん……」

 リゼがちょっとにやついているというか、口元をもごもごと動かしている。そんなに湖畔を巡るのが楽しみなのだろうか。……魔物が出るかもしれないのに。

「どうした?」

「な、なんでもない。じゃあ行こうか」

「ちょっと待て。二手に分かれて逆の方からそれぞれ確認するか、それとも見逃さないように二人で同じルートを通るか、どっちにするか決めよう」

 後ろでを翳して催促するリゼを制止し、やり方を提案する。

 俺としては出現する時間帯を考えて二手に分かれる方を推すが……。

「あ、あー……うん、私見逃しちゃいそうだから一緒に行こう」

「了解。じゃあ早速行こうか」

「うん……」

 リゼがそういうなら仕方がない。一緒に行くか。 

「はぁ~~……ヘインは昔からそうだよね……」

 歩き出すと同時にリゼが大きくため息をつく。

 さっきまで楽しそうだったのに急にテンションを落としている。相変わらず感情の起伏が激しい奴だな。

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