二十八話『協力者』

 明日朝。

 新聞の号外では、やはり基地消滅の話題が印刷されていた。


 帝国民のストレスも溜まってきている。

 その犯人は、私と既に断定されていた。


 被害者の中にツアーの名も無く、同時に私が死亡したとも書かれていない。

 巻き込めなかったか……。


 ───だが、基地を潰せたのは大きい。


 しかし、今後はそこまで大々的には動けないだろう。

 しばらくは隠匿生活をしなくてはならない筈。


 資金面にも、今の所困らない。

 基地から多少の金も奪ってきましたし。


「取り敢えずは、この紙袋を開けてみますか……」

「お、やっとですか」


 何もない所から、突然出てくるのはやめて下さい。

 呆れて物も言えないですが、話が停滞するので口を噤んでおこう。


「……ええ。昨日は逃げるので精一杯でしたので」

「まぁあれだけ暴れれば─────」

「兎に角。開けてみましょう」


 お喋りには付き合いませんよ。

 と言うわけで開けてみると───。


「……布?」

「制服、ですね───どこのですかこれ?」

「ああ……ええと、ああ!」


 レネが思いつく前に、その制服を見てみたが。

 セーラー服。ああ、女性用ですね。───やっぱりか……。


「第一工業高校。一番の名門校のモノですねぇ」

「工業が一番の名門?帝国の人口減少の影響か……」

「ええ。帝国は機械兵オートマタ開発に熱心ですから」

「でもそれで、間接的と言えど人口を減らす位なら、要らないですよね」

「……帝国も、戦争に備えてるんですよ」

「戦争?もう帝国に太刀打ちできる国も無いのに?」

「……」


 レネは答えなかった。

 少し俯いて。


 けれど数秒経った後に笑いかけた。

 話題を、逸らす様に。


「兎に角、着てみたらどうです?」

「……いや。止めておきます」

「───何でですか?」


 制服が紙袋に戻される。

 私は、レネの問いに一瞥を飛ばした。

 何故か。


「これは入校しろと言う暗示でしょう。しかしながら私は、その資格を得ていない」

「……と、言うと?」

「入学手続きの後見人、更には───来るであろう入学審査に不正を働いてくれる……」


「──────協力者に、会わねばなりませんから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る