第二十五話『狂戦士』

 瓦礫と粉塵を巻き上げて。

 視界端に映るはナース服。


 その力強い突きは機械兵オートマタを一瞬にして粉砕。

 後の流麗かつ豪快な猛攻によって───私の周りの兵達は全て、壊滅した。


「……ドクターの言う通りでした。やはり無謀に過ぎます」


 障壁奥のツアーはいつの間にか消えていた。

 この、私の元に駆け付けたかの女性の名は……。


「───アカネさん。……何故、ここに?」

「ドクターの采配故。追撃が来ますので、脱出しましょう」

「……了解です」


 あまり驚きはしなかった。

 そもそもそんな思いを抱く前に、彼女に付いて行ったから。


 以前こそこそと通った道を、豪快に走り抜けていく。

 道端には、アカネが倒したと思しき兵達が横たわっていた。


 そして、進む私達の前に立ちはだかる兵もお構いなしに。

 一般人では瞬間移動したと思う程の高速機動を以て、彼女は兵隊をなぎ倒していく。


 その戦い方は、女性が持ち得るであろうか弱さなど、毛程も感じられなかった。

 実に豪快。拳の一突きで壁を粉砕していく姿は、まるで狂戦士にも見えた。


「───アカネさん、人間じゃないですね」

「ええ。私はドクターに作成された機械兵オートマタ。───魔法も、使えます」


 突飛な発言に、私は一瞬疑いを持った。

 しかし、機械兵オートマタが嘘をつく理由も無い。


 彼女の頭髪、目、どこを見ても魔法が使える様には見えなかったが。

 私は逆算して、信じることにした。


「……稀有ですね。人体実験の賜物ですか」

「回答不能。───兎に角、私は二つの魔法を有しています。一つはこの身体能力と……」


 言い切るその前に、目の前に大量の兵が立ちはだかる。

 彼女はそれを見て拳を構えると同時に、私に告げた。


「貴方も手伝ってください。死にたく無いのならば」

「……分かっていますよ」


 銃を構え、アカネと背中合わせで会話する。

 そして兵達が私達に向けて銃を向ける、その瞬間。


 私達は研いだ刃を、投げ付けた。

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