第十六話『機械兵』

「野良機械兵オートマタ討伐、ですか……」


 その言葉共に、不意に出てきてしまう溜息。

 その真意を突くように、レネは言った。


「気乗りしませんよねぇ……野良の鉄屑は、大体いわくつきって事ですし」

「ですね。全ての機械兵オートマタはタグで管理されてるので、余程の事が無ければ野良になることなどない。

 でも今回の場合は、どうなのか……」

「……実際、タグが外れてるんじゃ無くて、本当の不良品ですよ」

「と、言うと?」


 私がそう聴くと、レネは笑った。


「──────帝国軍でも扱い切れなかった、じゃじゃ馬ですから」

「ほう……それは、随分と期待できそうですね」




 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢




 レジスタンスの拠点を抜けて、草木生い茂る森林の中。

 月光届かぬ深い森の奥で、火花が散る。


「腕破損、左眼球損失。その他傷痍を確認。手負いですねぇ」


 唸るようにレネが、目の前の機械兵オートマタを見て呟いた。

 迅速な容体確認。流石にここはレネですね。


「……それに苔が生えている、と言うのも追加で」

「むむぅ……一年前に廃棄されたらしいですが、場所的に帝国軍の厄介払いも含めてますねぇ」

「レジスタンス達の拠点真横ですしね……だから依頼を託したんでしょう」

「でっしょうねぇ……。でも手負いと言えど、あの鉄屑は強いですよ」


 レネは、私に忠告する様にそう言った。

 心配しているのだろうか……いや、それはない。


 ……レネの言う機械兵オートマタの強さ自体は、その外見を見れば分かり切っている。

 機械兵とは本来、身体を鋼鉄で使われた、金属光沢光る人型兵隊。


 あれこそ帝国兵の主力。並の人間以上の戦闘能力を持っている。

 けれど結局は人でないモノ。あれで私達の仲間は殺されてきた。


 レネもそれを見てきた。

 だからこそ彼女は彼らを鉄屑と呼び、蔑んでいるのだろう。


 しかし通常の機械兵オートマタは、人工皮膚など表面に貼り付けられていない。

 廃棄前は、かなりの高位に居た筈の機械兵オートマタだったのだろう。


 けれど何故か廃棄されている……。

 そういう特異さの意味で、レネは警告した筈だ。


「分かってます。あれ程人に似た機械兵オートマタ。全力で当たります」

「エクセルさん、頑張ってねー!」

「……戦闘中は、流石に黙っておいてくださいね」

「了解ですっ!!」


 そう言って上に飛んでいくレネを見届け、私は銃を手にする。

 隠れていた茂みから発砲と共に猛進して。


 この身体初めての、戦闘に移った。

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