まるで近未来
駐車場に車を止め、車から降りると、ただの角ばった白い塊の建物がある。
江角さんは壁の中央付近にある小さなシミの様な黒丸にカードキーを当てると建物の右側の壁が動き、入口が現れた。
「さあ、いきましょう」
待て、どうして急に近未来的な建物が現れた? ここの研究施設は国の秘密の施設とかなのか?
いっぱいのクエスチョンが頭に飛び交っている俺を置いて、さっさと施設に入って行く。
置いていかれるのはまずいとダッシュで建物の中に入った。
中は至って普通の建物に見えた。入ってすぐ廊下のようになっており、壁や床、天井は真っ白で何もないが、変な装置は見えない。
と思えば、廊下の突き当たりに行くとまた壁がある。
江角さんが壁にまた黒丸に手を当てて緑色の光が発光したと思えば、目の前にあったはずの壁が無くなる。
驚き立ち止まっていると、振り返った江角さんが笑う。
「ここオートロックなんです。早く来ないと閉まっちゃいますよ」
なんだか、急に高度すぎるテクノロジーに出会った気がする。
生体認証で壁が無くなる? 無くなるってなんなんだ。扉が開く訳ではなかった。壁が消失したように見えたのだ。
「あ、はい……」
俺は恐る恐る壁のあったと思われるところに手を伸ばした。
江角さんが通っていったので当然壁などある訳は無いのだが、未知の領域に踏み入れる心構えには必要な動きであった。
壁はやはり無い。スッと手を引けば、江角さんがこちらを見て、手で口元を抑えて笑っていた。
「皆さん最初の入り口には驚きますが、この壁に反応したのは山内さんが初めてです」
どうやら、先輩方は最初の壁の動きで圧倒され、こちらの壁に至っては平然と通っていたようだ。
二度あることは三度あるという言葉があるくらいだし、ここはそう構えていた方がいい場所なのかもしれない。
壁の向こう側である場所にたどり着くと、江角さんがスッと右手で壁に触れれば、俺が今通ってきた道が塞がれて壁が戻っている。
また俺の表情を見たのだろう。クスクスと笑いながら江角さんが歩みを進めた。
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