要塞
歯磨きをしていると家のチャイムが鳴る。
「はーい。待ってて下さいね」
ドタバタと走り、玄関の扉を開ければ、江角さんが笑顔で立っていた。
「山内さんおはようございます。ご無事で何よりです」
「いや、戦地に行った人に言うような言葉って……」
「ここの獣はそれくらいの話なのです。まあ、それは置いておいて、今日は軽ーく寿馬宇村でつける職業を紹介していきますね」
江角さんはノリが軽い人だとは思っていたが、戦地に行くほど命の危険がある獣の話を置いておくとはどういうことだ。気になって仕方がない。
「ご準備はできていますか?」
「はい」
俺は、すぐにリュックを手に取り、メガネを直して、江角さんの後ろへとついていき、車へと乗り込む。
車のエンジン音と共に、景色が過ぎて行く。
「江角さん、ずっとみんなに脅され続けてきたんですけど、ここの獣ってそんなに怖いんですか?」
俺はずっと気になった事をぶつけてみる。誰も深くは語らず、ただ気を付けろとしか言わないのだ。
「ええ、一応課長からも言われて、身を守る為にも最初に研究施設に連れて行くように言われているので、そこでご説明しますね。実際に見てもらった方が早いですから」
役場と山を挟んで裏側、細い山道を越えていけば、そこに白色のコンクリート造と思われるの建物がポツンと見えてくる。山の上から見るに大きさは分からなかったが、近づけば、でかいコンクリート塀に山の一部ごと囲われているのがわかった。相当広い研究施設と言えるだろう。
「こちらからは人はあまり住んでいない地域になります。主に研究施設しかありません」
【寿馬宇村獣研究所】と真新しい看板が掲げられており、しまっている門の前に看守部屋があり、看守が江角さんを見つけると、手を振ってくる。
江角さんは車を止め、ドアガラスを開ける。
「まどかちゃん。久しぶりー! 元気にしてた?」
看守さんは茶髪に少し色素の薄い目の色をした30代くらいの女性だった。江角さんとは知り合いらしい。まあ、人口の少ない島だし、職業柄いろいろな人に会う江角さんであれば、知り合いでもおかしくはない。
そして、江角さんの名前はまどかさんだったらしい。
「
「もっちろん。楽しんでね。島特有の進化を遂げた獣達が見れるわよ」
「島特有の進化?」
某島のように、独自に生態系を繰り広げ、固有種が多く存在しているという事なのだろうか?
更に頭の中に疑問が生まれて行く。
「まあ、見てきてみて!」
ニコッと微笑んだ唯花さんは、門を開けてくれて、車を通してくれる。
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