14.トゥンカロン・セッション

「トゥンカロンは魔法の音楽が鳴るんだ!」

 ストリートピアノの横で、魔法菓子を手にした子どもが叫んだ。

太ったマカロンの異名を持つ菓子をかじるたび、華やかなラッパの音がこだまする。

 それが合図だったのか、パフパフと陽気な音に続くようにピアノの音が響いた。見知らぬ同士の突然のデュエット。無邪気なラッパの音にピアノが寄り添っていると、助太刀が入った。

「飴糸の調べもどうぞ」

 飴細工の美しく透き通ったバイオリンが旋律を奏でる。では私もと舞い降りたのは、太鼓のスコーン。トントントンと軽快なリズムが音をまとめ上げ、やがて一つの音楽になる。

 ――甘く朗らかな魔法菓子の演奏が終わると、熱気をはらんだ拍手が一帯を包んだ。


【2024年5月19日 文学フリマ東京38無料配布初出】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法菓子コレクション 服部匠 @mata2gozyodanwo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ