茜姉様がやってきた


 聖ブリジッタ女子学園山陽校にも、冬休みなんてものがやって来ました。

 宇賀さんの部屋に、町子さん・静子さん・美千子さんの三人娘が戻ってきています。


 大掃除もやっと終わり、年越しの準備も終わって、ほっとしている師走の二十九日です。

「この間のクリスマス・パーティー、楽しかったわね」

 と、クリームヒルトさんがしゃべっています。


 クリームヒルトさんと三人娘のほかに、京子さんと乙女さん、さらにはヴァランティーヌさん、明子さんと、八人が集まっています。


 さらにクリームヒルトさんは、

「乙女ちゃん、お母さんによくお礼いっていてね」

 この前、皆は山野レディファションの、クリスマス・パーティーに呼ばれたのです。

 

「珍しく宇賀様も森さんも稲田さんもいたわ、真野静香さんがいたのには驚いたわ」

 町子さんが感心しています。


「私、フォーマルパーティーって初めてだったの、明子と二人、ひるんでしまったわ」

 京子さんの感想です。


「そうだ!茜姉様がもうすぐこられるのよ♪」とクリームヒルトさん。

 娘たち、歓声を上げました。


「美子様は!」と美千子さん。


 クリームヒルトさんが、

「忙しいらしいの、この間かなり無理してこられたから……」


「なに、私じゃだめなの?」

 茜さん、突然転移してきました。

 宇賀さんも一緒です。


 クリームヒルトさん、ものすごく嬉しそうな顔をしました。


 茜さんが、

「さて、皆さん準備は出来ていますか?」


 ?


「明日は三十日じゃない、餅つきよ、餅つき」


 宇賀さんが、窘めるように、

「茜様、いま少し詳しい説明をお願いします、『餅つき』だけでは、この子たちには分からないではないですか」


「明日から正月二日まで、瀬戸内初詣クルージングなのよ、その船上で餅つきなのよ」


「えっっっ!」と娘たち。


 どうやら宇賀不動産開発合名会社が、神戸を起点に日本クルーズをしていた、アメリカの小型客船を買い取ったようです。 

 大寒波のお陰で、この会社は日本での営業を断念したとの事です。


 相当にお洒落な客船で、排水量四千二百トン、定員百十四名、最大百五十七名、キャビン数五十七室、プール、ジャグジー、当然レストランもあります。


 どうやら突貫工事で、○○レイヨン社の、浴槽用の高濃度人工炭酸泉装置を取り付けたようです。

 これ必須ですよね、プールとジャグジーは温浴にも出来るようです。


 その上、一部の部屋は隣の部屋との境に防音ドアをつけて、行きかう事が出来るようになっています。


 真白さんが、

「アジア大司教区の現地採用職員さんなどのほかに、東京聖女女学校八回生やアジア大司教区雑仕(ざっし)養成校などの生徒さんたちも集まるわよ」

「カリさんは忙しいとの事ですが、チュヌちゃんは来るわよ」


 東京聖女女学校は冬休みだったのですが、八回生に希望者を募ると、全員が参加したいとの事で、帰省した者も二十九日の昼に寄宿舎に戻って、そのまま新幹線に乗って神戸から乗船とのことです。


 アジア大司教区雑仕(ざっし)養成校は、直接港に集合するそうです。

  

 東京聖女女学校八回生十四名に、アジア大司教区雑仕(ざっし)養成校の三十名、クリームヒルトたち、ゼブル騎士団から幾人か、その他色々な方が、招待されているようです。

 

 瀬戸内振興が目的の地方議会の要請で、宇賀不動産開発合名会社がこの船を、神戸を母港にする瀬戸内クルーズ計画に投入するらしいのです。

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