クリームヒルトさんは吉川の姓をもらっています。

　この吉川姓を名乗れるのは、ミコ様の愛人だけで、それ以外で許されているのは、クリームヒルトさんだけなのです。

　それ故クリームヒルトさんは、寵妃といわれるミコ様のお手つき女たちからも、一目置かれている存在なのです。

　今ではその幼い首にはパープルゴールドにグリーンゴールドのライン、そして赤いルベライトが嵌っている、佳人待遇側女のチョーカーが輝いています。

　……この度、吉川クリームヒルトとして、私はミコ様と共に一年を過ごす……

　私はミコ様の妹となる……

　そう思うと嬉しくて嬉しくて……

　長女は吉川茜、高校三年生、次女は吉川美子、高校二年生、三女は吉川クリームヒルト、中学二年生、全て同じ女学校に通学します。

　なんでも中高一貫校という事らしく、毎朝一緒に登校するということも、寂しがり屋のクリームヒルトさんには大歓迎です。

　ただお二人は大ブーイングだったようですね。

　希望の東京の女学校ではなくて、警備上の問題とかで、地方都市にある学園内のもう一つの女子高校への転入となったからです。

「これって詐欺ですよ！」

　とイシス様が抗議したようですが、直接に警備を担当するミリタリーが東京滞在に難色を示したのです。

　ミリタリーは、ナノマシンをこの惑星全土に増殖させています。

　このナノマシンは惑星を改造できるほどの力があり、それはミコ様やイシス様、そしてミコ様の寵妃にさずけられる、チョーカーと呼ばれるものに反応するのです。

　それ故にミコ様の寵妃たちは、ウィッチと呼ばれています。

　現地の暦で二〇〇一年三月三十日に、地方都市のそれなりの高級マンションに、引越しを偽造して乗り込んだのです。

　勿論引越しは、業者に偽装したロボットたちです。

　イシス様、つまりここでの茜さんが、

「四月六日に、学校へ転入手続きに行きます」

　ミコ様、つまりここでの美子さんが、

「十日から学校ですね、姉さん、下準備はできているのですか？」と

　なんで九日の入学式当日じゃないのか……と、一瞬クリームヒルトさんは思ったのですが、まぁ手続き上の問題だろうと納得したようです。

　後で学園側の要求だったと、クリームヒルトさんは聞きました。

　茜さんが

「大丈夫よ、全ての関係に対しては、マレーネさんがつつがなく手続きを終わっています」

「四月六日は学校へ挨拶に行くだけです」

「私たちは三姉妹で、両親はアメリカに転勤、とにかくアメリカで両親が落ち着くまで、日本の遠い親戚のいる地方に住むことになった」

「そしてその間、私が二人の妹の面倒を見る、多少無理がありますが、全て記憶などは操作されていますから心配ご無用よ」

　クリームヒルトさんは、マレーネさんの名を聞いてホッとしたのは確かです。

　マレーネさんとは、数万年とか数十万年とかの、遥に古代からアスラ族に仕えている人工知能で、その本体は惑星クラスの大きさと佳人以上には説明されています。

　事実クリームヒルトさんも、テラの幾多の内乱において、マレーネさんの絶大な力を目にしています。

　クリームヒルトさんとしては、マレーネさんとは絶大な力を秘めている愛人のお一人、そのように認識しているのです。