「ソフトクリーム」

 一人旅。バイクを購入する以前からも、青春18きっぷを使用して遠出をしていた。バイクを購入してから1月あまり運転にも慣れを感じてきた。一度くらい峠を責めてみようと思い、近くの山に向かってバイクを走らせた。

 私の愛車はスポーツタイプのいわゆるレプリカ車だ。それも相まって私は峠で爆走を決めようとスピードを上げようとアクセルを回す・・・。綺麗に曲がるイメージをしながら峠を攻める・・・。数分後、峠にビビりながら「怖い・・・怖い・・・」と叫ぶ変なライダーがいた。私だ。



 やっとの思いで峠を登り切り、あるテラスにたどり着いた。観光客たちが望遠鏡をのぞき、景色を楽しんでいた、私も一息と、ベンチに腰掛け山頂の景色を楽しむ。すると、目の端に捉えたのはソフトクリームののぼりだった。道中緊張の連続を味わった私にとって、糖分の摂取はなくてはならない。

 さっそく私は、ソフトクリームを一つ注文した。久々に食べるソフトクリームは、濃厚な味わいだ。

「美味しい」

 コーンの部分もクッキー生地だろうか、味わい尽くせるものだった。

「うん。旨い」



 私はそんなソフトクリームを堪能していたため、ここが観光地であることをすっかり忘れていた。(バイクでの疲労もあるだろう)独り言をつぶやき続けていたことに気づくことができなかった。

「お母さん、僕もソフトクリーム食べたい。」

 みると、私の前に5歳くらいの男の子が私のソフトクリームにくぎ付けではないか。



 他の観光客たちも釣られたのか、ソフトクリームの列に並び始めた。楽しそうに並ぶ家族連れや、カップル、友達同士だろうか・・・。一人でここまで来たことが深く刺さる光景が広がっていた。



「あぁ。次は連れが欲しい・・・」そう思わずにはいられないGWのとある一幕。

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短編集 投稿 ふゆき @huyunoki

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