第61話 ジョブに【大正義】とかやめて下さい

 エリス姫に報告をした翌日、俺達はダンジョン探索を休みにした。


 エリス姫側もニューヨークファミリー側も、これから増援が王都から到着する。

 ここルドルの街で、王位継承権争いの場外戦が起こる。


 既にエリス姫は、襲撃を受けている。

 これから、荒れた展開になりそうだ。


 何が起こっても対応出来るように、俺たちも備えておかなければ……。


 その為に、今日は武器防具のメインテナンスや情報整理に一日充てるつもりだ。

 自宅の居間で、俺、セレーネ、サクラでお茶を飲みながら打ち合わせを始めた。


 まず、サクラのステータスをチェックさせてもらう事にした。

 以前、見せて貰った時は、明らかに偽装していたからな。


「サクラ、ステータスを見せてよ。正直なヤツ」


「良いですよ!」



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 ◆基本ステータス◆


 名前:サクラ

 年齢:16才

 性別:女

 種族:天使族 new!

 ジョブ:大正義剛腕美少女天使 new!


 LV: 11

 HP: 70/70

 MP: 10200/20200

 パワー:110

 持久力:90

 素早さ:90

 魔力: 180

 知力: 290

 器用: 30


 ◆スキル◆

【意識潜入】【実体化】【飛行】


【無属性魔法】

 -【スリープ】

 -【魔法障壁】new!


【光属性魔法】

 -【ヒール】new!

 -【コンディショニング】new!

 -【ホーリーライト】new!


【大正義】new!

【剛腕】new!

【アカシックレコード(AL1)】new!

【楽器演奏】new!

【床上手】new!



 ◆装備◆

 制服(防御力+500 魔法防御力+500)


 ◆アイテム◆

 マジックバッグ


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 俺とセレーネは、サクラのステータスを見て、飲んでいたお茶を盛大に噴き出した。


「ちょっ! まっ! サ、サクラ! このジョブの大正義剛腕美少女天使って、何?」


 いやいや、こんなジョブは無いだろう!

 あり得ないだろう!


 サクラは、胸を反らせて答えた。

 心なしか胸も大きくなった気もするが、そこは、今はスルーだ。


「良いでしょ! 戦闘時にステータスが3倍化するんですよ」


「何だよそれ! メチャクチャな性能のジョブじゃないか!」 


「HPとMPは、そのままですけどね。お母さんに作ってもらったんですよ」


 うん?

 お母さん?

 サクラのお母さんと言えば……。


「お母さんて、女神アプロディタ様? アプロディタ様が、このジョブを作ったの?」


「そうです。人間が勇者を真似てジョブを作ってるよって話しをしたら、面白がってましたよ。色々ジョブを作ってみるって言ってましたよ」


「へ、へー」


 ああ、そうか。

 元々ジョブを作ったのは、神様なんだよな。


 最初ジョブは、勇者にのみに与えられていたんだよね。

 勇者を見て人間が、戦士とか魔法使いとか色々なジョブを開発したんだったな。


 しかし、アプロディタ様ノリが良すぎだろう。

 ヘンテコなジョブを作りそうだな。


 大正義シリーズ! とか。

 剛腕シリーズ! とか。


 俺は、続けてサクラに聞いた。


「このスキルの【大正義】とか、【剛腕】とかは何だよ!?」


「ふっふーん。【大正義】は、戦闘時に魔法威力3倍化です! 【剛腕】は、格闘戦闘時に与えるダメージ3倍化です! 両方とも、ユニークスキルって言うんですかね? わたしだけのオリジナルのスキルですよ!」


「これも、お母さんお手製?」


「そうです!」


 頭が痛い。

 なんてメチャクチャな……。


 セレーネは、腹を抱えて笑っている。


「サクラちゃん、すご~い! 頼もしいよ~! それに【床上手】とか、何する気よ~!」


「ふふ。ヒロトさんが喜ぶと思って」


 いや、まあ、普通に嬉しいけれど。

 しかし、アプロディタ様も娘に【床上手】なんてスキルつけるなよ。


 俺は【床上手】をスルーして話を進めた。

 動揺して、ちょっと早口になった。


「えっと、【魔法障壁】は、魔力で壁を作って、魔法攻撃を防ぐヤツだろ。【ヒール】は、回復魔法。【コンディショニング】は、解毒や状態異常を解除する魔法。【ホーリーライト】は、対アンデット魔法。この……、【アカシックレコード(AL1)】ってヤツは?」


「あー、ウイキペディアみたいな物です」


 えーと。

 色々分かるって事か。


 セレーネが、わからないと首をかしげている。

 この世界にウイキペディアは、ないのですよ。


「AL1は?」


「アクセスレベル1ですね。低いレベルのアクセス権です」


 セレーネが困った顔をしている。


「2人の話している事が~、わからな~い」


 サクラは、セレーネに改めて説明した。


「えっとですね。アカシックレコードって言うのが、神の世界にあるのですよ。この世界の色々な情報を、記録してあるんですね。わたしは、ある程度ですが、それを見る事が出来るんですよ」


「へー! サクラちゃん、凄いね! 伊達に神の子やってないね!」


「ふふ。そうでしょ。でもね、【鑑定】もアカシックレコードにアクセスして、情報を取得しているから、【鑑定】のちょい上の能力って感じなの」


 ああ、【鑑定】って、そう言う仕組みなんだ。

 待てよ……。


「サクラの【アカシックレコード】で、俺の呪いの事が、わからないかな?」


「ごめなさい。天界で試して見たのだけれど、わからなかったです。母には、何かわかったら教えてくれ、って頼んでおきました」


「そうか。ありがとう」


 俺の呪いの事は、わからないか……。

 残念だけれど、仕方がない。

 サクラのお母さんが、何か知らせてくれるのを待とう。


 まあ、しかしだ。

 サクラが、天界に里帰りして得たジョブやスキルは強力だ。

 光魔法をまんべんなく覚えて来てくれたのもありがたい。

 パーティーの力が、グッとアップした。


 ステータス値も、今回は正直に見せてくれた様だ。

 さすがはエネルギー体の天使様、MPや魔力の数値が高い。

 格闘戦向きのパワー、持久力、素早さも高いし、知力が高いのも頭の良いサクラらしい。


 HPが、もうちょっとあると良いけれど、その分は、装備の制服の防御力の高さでカバーされている。

 MPが大きく使われているのは、【実体化】しているからなんだろうな。

 器用が低いのは、そっとしておこう。



 今度は、サクラが俺とセレーネのステータスを見た。


「ヒロトさんとセレーネも、着実にステータス上がってますね。特にヒロトさんのパワーが上がりましたね」


 そうなのだ。

 アカオオマムシのカードが【パワー上昇】だったので、アカオオマムシ狩りでかなりパワーが上昇した。

 パワーは攻撃力に直結するステータスなので、ありがたい。


 俺のステータスは、こんな感じだ。



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 ◆基本ステータス◆


 名前:ヒロト

 年齢:12才

 性別:男

 種族:人族

 ジョブ:シーフ


 LV: 1

 HP:  35.35/35.35

 MP:  10/10

 パワー:101.87↑up!

 持久力: 11.58

 素早さ: 32.02 (41.626)+30%↑by job

 魔力:  14

 知力: 140

 器用: 145


 ◆スキル◆

【鑑定(超)】【マッピング】

【剣術(初級)】-【刺突】

【罠作成】【忍び足】

【ドロップ率上昇(小)】【夜目】

【パーティー編成】【宝箱探知】

【隠し部屋探知】

【神速★】

【気配察知】


 ◆装備◆

 ボルツ製革の鎧(オーガ) 防御力+30↓down!

 コルセア製ショートソード(ブルースチール) 攻撃力+150


 ◆アイテム◆

 マジックバッグ



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 ◆裏スキル◆

【ゴールド】【カード】


 ◆ブロンズガチャ獲得カード◆

【攻撃力上昇(10%・1時間)】

【防御力上昇(10%・1時間)】

【回復カード(毒)】


 ◆シルバーガチャカード◆

【前世記憶】【頭脳明晰(中級)】【絶倫(中級)】


 ◆ブロンズガチャ・カード◆

【ややイケメン】【幸運(小)】


 ◆悪魔からのカード◆

【-レベルアップガチャ-】


 ◆寿命◆

 59年10ヶ月9日 ↑up!


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 セレーネは、出会った時から順調にレベルを上げている。

 特に武器の取り扱い、弓矢の威力が上昇する器用さの上昇が目立つ。


 魔力やMPも伸びている。

 適性のある風属性魔法を覚えれば、後衛としてかなり頼もしい。


 セレーネのスキルは、こんな感じ。



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 ◆基本ステータス◆


 名前:セレーネ

 年齢:12才

 性別:女

 種族:エルフ族

 ジョブ:狩人


 LV:  12

 HP:  46/46↑up!

 MP:  89/89↑up!

 パワー: 29↑up!

 持久力: 34↑up!

 素早さ: 96↑up!(110.4)+15%↑by job

 魔力: 106↑up!

 知力: 148↑up!

 器用: 190↑up!(218.5)+15%↑by job


 ◆スキル◆

【風の精霊の加護】

【弓術(初級)】

【解体】

【片手斧】


 ◆装備◆

 弓(木製) 攻撃力+10

 無限の矢筒(矢の複製機能)

 斧(小・鉄製) 攻撃力+5

 エルフの服 防御力+5 魔法防御+5


 ◆アイテム◆

 マジックバッグ


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 俺は、ステータスを見ながら意見を述べた。


「みんなステータスが上がっていて頼もしい。問題は、装備かな」


 セレーネが真面目な顔で答えた。


「そろそろ、弓を買い替えたいな……。かなりヘタって来た感じなんだよね」


 セレーネは、俺が最初に買ってあげた一番安い弓を大事に使ってくれている。

 アカオオマムシ狩りでもフル稼働だった。


「俺の鎧も防御力が落ちているんだよね」


 ボルツ鎧は、ホントに良く俺を守ってくれた。

 非正規品だったけれど、結構気に入っている。


 サクラが、思い出したように聞いて来た。


「レッドリザード戦の時、ドロップした鎧はダメですか?」


「うーん。ダメだね。防御力+10だった。火属性魔法に耐性があるのは、良いけれど、ボルツの鎧の方が防御力+30で、防御力が高いんだよね」


 レッドリザードの鎧は、それでもチェーンメイルと同等の防御力なので、初心者には十分な装備品だ。


 それだけ、ボルツの鎧が、良く出来ている。

 見習い作とはいえ、オーガの革を使っているだけの事はある。



 ミーティングが終わると、武器屋にセレーネの弓を買い行く事になった。

 セレーネは武器屋で新しくコンポジットボウを買った。


 コンポジットボウは、小さいサイズだがパワーのある弓だ。

 複数の素材を組み合わせて加工する事で、弓の反発力を高めている。


 前の世界では、騎馬民族が馬上で使っていた。

 いわば世界を制した弓だ。


 この世界のコンポジットボウは、丈夫な木と魔物の腱と骨とを職人が張り合わせて作るハンドメイド品だ。


 職人が時間をかけて手作業で作るのだから、当然、値段も高い。

 セレーネの弓は、お隣の国、ウインストン王国からの輸入品で、お値段なんと50万Gだ!



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 レッドディアの弓(木製) 攻撃力+70


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 高いだけあって、威力は前の弓とは雲泥の差だ。

 セレーネの弓装備は、攻撃力+10から、+70にアップだ。


 レッドディアは、ウインストン王国の森に住む大型の鹿型魔物だそうだ。

 力が強く群れているので、討伐難易度は高めらしい。


 セレーネは、ポンと現金一括払いした。

 これまで稼いで、貯金していたから余裕で払える額だ。


 武器屋の親父は、子供の俺達が50万Gを即金で払ったので、目を白黒させていた。


 セレーネは、新しい弓を手にして超ご機嫌だ。


「ヒロトが買ってくれた弓も~、記念に持っておくね~、ありがとう!」


 セレーネが、頬にキスしてくれた。

 参ったな……。

 

 俺は前世で、学校で習った短歌を思い出した。

 口にしてみた。


「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで」


 俺の気持ちは、色々バレてるのだろうな……。

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