第753話 卒業
「『白ウサギの騎士』のヒロ!」
「はい!」
名を呼ばれて元気良く返事。
頭に不本意な二つ名である『白ウサギの騎士』を付けられ、一瞬、眉を顰めそうになるも、グッと我慢。
ガミンさんとミエリさんだけの卒業式とは言え、この場で僅かでも不快感を表すのは流石に失礼。
空気を読んで平静を装う。
口まで出かかった『悠久の刃 ヒロです!』を飲み込む。
非公式なはずの2つ名『白ウサギの騎士』が優先され、
正式な『悠久の刃』の方が呼ばれない違和感を感じながら。
「この街での貴殿の成果を認め、ここに中央へのパスポートを授与する」
「ありがとうございます!」
ガミンさんから中央へのパスポートを恭しく受け取り、
これまでの事を頭に思い浮かべながら手の中のパスポートへと視線を落とす。
手帳サイズの平べったい電子機器。
スマートフォンよりもさらに薄く、今後、中央での移動の際はこの機器を用いて街の出入りをすることになる。
当然ながら俺の個人的なデータが記録されており、
パスポート表面にも俺の名前とチーム名が…………
「ガミンさん…………」
「んん? なんだ?」
「このパスポートに書かれたチーム名…………『白ウサギの騎士』になっているんですけど?」
「……………………ヒロ、何を言っている? お前は『白ウサギの騎士』だろ?」
「違います! ………って! 違うんじゃなくて、俺のチーム名は『悠久の刃』です! 『白ウサギの騎士』は2つ名!」
「あ……………、そういやそうだったなあ~、忘れてたぞ」
ガミンさんは頭をポリポリ掻きながら、呆けたように呟く。
確かに世間では『白ウサギの騎士』の名の方が浸透、バルトーラの街の中では知らない人がいないレベル。
逆に『悠久の刃』は知る人ぞ知る……というか、知っている人の方が珍しいぐらい。
だが、俺のチーム名は『悠久の刃』なのだ。
断じて『白ウサギの騎士』ではない!
「いやいや! 何で間違えるんですか! 俺、白翼協商に入った時、きちんと書類に『悠久の刃』って書きましたよ! いくら『白ウサギの騎士』の方が有名だからって、勝手にチーム名を変えるなんて酷くないですか!」
「そう言われても………、おかしいなあ、チーム名なんて、勝手に変わるもんじゃないんだが………」
ガミンさんは少し悩んだ素振りを見せた後、
「いっそこの機会にチーム名を変更したらどうだ? どう考えてもそちらの方が分かりやすいだろ?」
出した言葉は俺の希望に沿わない提案。
もちろん俺は即座に却下。
「嫌です! 俺のチームの名前は『悠久の刃』なんです!」
「チーム名は割とコロコロ変わるモノだぞ。逆に一度定着した2つ名は変わらない………、まあ新しい2つ名が追加されていくのは良くある話なんだが」
「変えません! 『悠久の刃』の名は『悠久』なんです!」
「う~ん…………、困ったなあ………」
俺の詰問にガミンさんは煮え切らない態度。
書類の手続きが面倒臭いのか、のらりくらりと躱そうとする。
だが、そこは俺の譲れない所。
いくらお世話になったガミンさん相手でも引くつもりは毛頭無い。
ムッとした顔の俺と、
悩ましそうな表情を浮かべるガミンさんが向かい合う中、
「ヒロさん、よろしいですか?」
ガミンさんの隣に座るミエリさんが前に出て来て、
「なぜ、『悠久の刃』で登録していたチーム名が変わってしまったのか、少し調べて来ます」
「はい、どうぞ」
「では、失礼します」
軽く会釈を返してミエリさんはそのまま応接間を出ていく。
そして、その5分後、ミエリさんは数枚の書類を手に戻って来た。
「ヒロさん、こちらをご覧ください」
「はい………、これは毎月の報告書?」
白翼協商に所属する狩人が毎月月末に提出している報告書。
簡単な収支や活動内容、予定などを記入。
秤屋として狩人の活動を把握する為の資料として使われるモノ。
もちろん俺のチーム『悠久の刃』も毎月提出を行っている。
遠出した時などで提出時期がズレることはあっても、
この6ヶ月間、抜けなく提出していた。
報告書自体は森羅と秘彗が作成、白兎のチェックを経て、
白兎自らが俺へと決裁を仰ぎ、最終的に俺がサインして白兎に返す。
そして、森羅が白翼協商まで持って行くと言う流れ。
「ミエリさん、これが何か?」
「この署名の部分を見てください」
「え? 俺のサインですけど…………、あっ!」
報告書の末尾に署名欄があり、そこにチーム名と俺の名前、『悠久の刃 ヒロ』と書いたはずなのだが………
『悠久の刃 ヒロ』が二重線で消されていて、
その上から兎マークの訂正印がポンと押してあり、
その下に達筆な文字で『白ウサギの騎士 ヒロ』と書かれていた。
「な…………」
思わず絶句。
予想外の原因に、ポカンと口を開けたまま、
目の前に置かれた報告書をただ見つめ、
ジロリと足元の白兎へと視線を向けた。
署名を『白ウサギの騎士 ヒロ』に変えた動機、
森羅・秘彗⇒白兎⇒俺⇒白兎⇒森羅⇒提出という書類の流れ、
何より、この兎マークの訂正印。
もはや、この書類改竄の下手人は白兎以外に有り得ない。
しかし、当の白兎は俺と目を合わせないようサッと目を伏せ、
次の瞬間、
突如、探偵帽を取り出し頭に被った。
前後につばがある帽子、所謂『シャーロックハット』だ。
さらに、これまた超有名な探偵が使っていそうなパイプを口に咥え、
火も点いていないのにフーッと煙を吐く真似。
そして、耳を震わせ、幾分声?を低めにして呟く。
フルフル
『ふむ、提出された報告書の署名がいつの間にか改竄された………、これは難事件ですな……』
目の前の報告書に視線を落としながらの落ち着いた口調。
その蒼く輝く目に宿る深い知性と好奇心。
心は熱く、されど頭はクールに。
フリフリ
『ここは私に任せてもらいましょう。この名探偵ラビロック・ハクトームズに』
「誰やねん、ソレ?」
白兎の自称する探偵名に思わずツッコミ。
おそらく『シャーロック・ホームズ』をもじったのだろうが、
ウサギを混ぜ過ぎてもはや原型を留めていない。
だが、白兎はそんな俺のツッコミを平然と無視しつつ、
報告書をつまみ上げ、鼻を近づけてくんくんと匂いを嗅ぎ、
何やら指でこすって指紋を確認し始めた。
さらに裏に光を透かして見たり、角度を変えて眺めたり、用意していたらしい小さな虫眼鏡を取り出しては印刷面をじっくりと覗き込んだり……
ピコピコ
『この報告書に残された形跡からすると………、ふ~む……、今回の事件は少々手強いようだ、ワトソン君』
「だれがワトソンじゃ」
おもむろに振り返って俺を『ワトソン君』呼び。
どうやら白兎はどこまでも名探偵ホームズになり切るつもりである様子。
俺はにべも無く返したが、白兎は気にせず推理を続ける。
パタパタ
『1つずつこの報告書から分かったことを述べよう。まず、この訂正印……押し付けの強さからして、かなりの決意が感じられる。そしてこの筆跡から漂うインクの香り……ふむ、これはアクリル樹脂を主成分としたオーソドックスな市販品………』
自分の鼻先をぴくぴくと動かし、
自身の推理を自慢げに展開。
フルフル
『さらにこの訂正文字からは……うむ、見事な筆遣い。間違いなく、機機種の手によるもの……』
報告書を手に、晶脳の中で組み立てたらしい推論を披露。
ピコピコ
『犯人を絞り切るのは難しい。白翼協商に提出された書類を改竄するような実力を持つことから、おそらく組織的な犯行………』
白兎はパイプをくわえ直し、ピシリと報告書をテーブルの上に置いて、
パタパタ
『しかし、推理はここまで。これ以上犯人を絞り込むのは不可能に近い……』
くるりと帽子を取って胸に当て、目を伏せながら結論を出した。
フルフル
『残念ながら、この事件は迷宮入り、ですな……』
「そんなわけあるか! 犯人はお前だろうが!」
ゴツンッ!
フリッ!
『たわばっ!』
俺の振るった拳骨が綺麗に白兎の頭へヒット。
ゴツンッ! という重い金属音と共に、白兎はその場でひっくり返り、帽子とパイプがふわりと宙を舞った。
「道理で『悠久の刃』が広まらないわけだ! 白翼協商でもずっとチーム名が『白ウサギの騎士』だと勘違いされていたし! 全部お前の仕業だったのか!」
白兎を上から睨みつけて詰問。
まさかこんな所で白兎に裏切られるとは思わなかった。
前々から『悠久の刃』のチーム名を『白ウサギの騎士』に上書きしようと立ち回っていたが、こんな直接的な方法を取るとは………
「俺の署名を勝手に書き換えやがって!」
フルフルッ!
『マスターの字が汚過ぎるのが悪いんだよ!」
しかし、詰め寄る俺に白兎は耳を揺らして反論。
足をバンバン踏み鳴らしつつ、下から俺を見上げながら声を荒げる。
パタパタ!
『マスターの署名の文字が汚いから、受付の人に報告書を突っ返されたんだからね! だから僕が代わりに署名したの!』
「な………、それとこれとは………」
白兎の反論に言葉が詰まる俺。
俺の字が汚いのは生まれつきの仕様。
自分でメモに書いた文字すら時間が経つと自分で読めなくなる程。
集中して時間をかければ何とか、綺麗とは呼べないまでも、人の読める字が書けるようになる。
しかし、俺も最初の報告書は気合を入れて署名していたが、だんだん数を重ねるうち、手を抜くようになって………
「だったらそう言えば良いだろ? 俺だって、そう言われたら、もう一度気合を入れ直して、だな………」
フリフリッ!
『言ったけど、【面倒臭いから後で……】って、後回しにしたでしょ。で、結局、いつまで経っても取り掛からないから、報告書の提出期限が迫って、森羅が困っちゃって………、だから僕が代わりに署名したの! それからずっと僕が代筆したんだよ!』
「…………じゃあ、なんで、チーム名を『白ウサギの騎士』にした!」
ピコピコ
『その方が受付の人分かりやすいでしょ。それに、ウサギ、可愛いし!』
「最後のは関係ねえ!」
言い争う俺と白兎。
俺の相棒であり、従属機械種と宝貝、霊獣を兼ねる白兎だが、
どうにも噛み合わないことも幾つかあり、それが原因で喧嘩することもないわけではない。
今のような状況も稀にある諍い。
いつも最終的には白兎が折れるか、俺が妥協するか、
もしくは第三者の介入が…………
「ヒロさん、白兎さん。事情は何となく分かりましたが、ここは秤屋の事務所ですよ。お静かに」
唐突に行われた俺と白兎の寸劇に、目を白黒させていたミエリさん。
しかし、しばらくすると我を取り戻し、優しい口調ながら妙に迫力のある言葉で俺と白兎を注意。
若いながら長年新人狩人達を担当して来たベテランの風格。
数々のヤンチャな若造や我儘言い放題のお坊ちゃんを叱り飛ばしてきたのであろう。
今も歴戦の威風を漂わせ、俺と白兎を交互に見つめ、
「あんまり騒ぐと怖~いお仕置きがありますからね」
ニッコリと微笑みながら無慈悲な通告を口にした。
「はい、すみません」
フルフル
『ごめんなさい』
俺と白兎はノータイムで言い争いを止めてミエリさんに頭を下げた。
その後、ミエリさんがチーム名が変更されていたことについての説明を淡々と語ってくれた。
「3ヶ月目からこのように署名欄が修正されておりましたので、事務の者がチーム名の変更を希望されていると判断し、変更を行ったようです。新人狩人の中にはものぐさな方もいらっしゃいますから、気を利かせたつもりだったようですが………」
ミエリさんはそこで一旦言葉を切り、
申し訳なさそうな表情を浮かべて、
「確かに、きちんとヒロさんの意思を確認せず、チーム名を変更してしまったのは、こちらの配慮が足りませんでしたね。申し訳ありません」
謝罪と共に、斜め45度の見事なお辞儀。
有能なオフィスレディ風に謝罪対応を行うミエリさん。
今回、白翼協商としての非は無いとは言い切れないが、謝罪をしなければならないレベルかどうかは微妙。
元々の原因はこちらにあるのだ。
ここは突っ張っても良かったのであろうが、そこは俺への配慮を見せてくれた形だろう。
「こちらこそ、すみません。うちの白兎がとんでもないことを………」
フルフル
『申し訳ありません、うちのマスターの字が汚いから………』
「………………」
ピコ
『………………』
再び睨み合いそうになった俺と白兎だが、
「ヒロさん、白兎さん」
ミエリさんが静かに俺達の名前を呼んだ瞬間、
「いえ! 何でもありません!」
パタッ!
『イエス、マム!』
俺と白兎、主従共々ミエリさんへと軍隊ばりの最敬礼。
するとミエリさんは『あらあら、まあまあ』という感じの曖昧な笑みを浮かべて、先ほどからずっと大笑いしていたガミンさんを振り返り、俺への助け舟を出してくれた。
「支店長。ヒロさんは『悠久の刃』の名に拘りがあるようですし、ここはきちんとチーム名を修正してあげてもらえませんか?」
「ああ………、仕方がないなあ………、面倒臭いが一筆書くか」
ミエリさんの言葉に、ガミンさんは少しばかり苦い顔をしながらそう呟くと、
「ミエリ、ヒロに新しいパスポートを用意してやってくれ。もちろん名前は『悠久の刃』で。先に送った『白ウサギの騎士』としての功績データは、中央の方で情報を統合してもらおう」
「はい、承知しました」
支店長がGOを出せば話は早い。
たった30分で新しい中央へのパスポートが用意され、
再びガミンさんの手から俺へと渡される。
「ほらよ。チーム名『悠久の刃』で作り直したぞ」
「ありがとうございます!」
「言っておくが、このパスポートはあくまで『仮』だ。ヒロがこの街で上げた成果はすでにチーム名『白ウサギの騎士』として中央に送ってしまっているからな。中央に入ったらなるべく大きな街を訪れて白翼協商の事務所を訪ねろ。そこでこの書類を見せるんだ。この書類に『悠久の刃 ヒロ』が『白ウサギの騎士 ヒロ』であることを俺が保証してある。そして、『白ウサギの騎士』で送った成果を、こっちの『悠久の刃』に付け替えて貰え」
「なるほど………、コンバートが必要な訳ですね」
「そのパスポートに記載された実績はゼロだからな。それを中央の秤屋に持ち込んでも、ほとんど新人と変わらない扱いになるぞ。『白ウサギの騎士』の実績を入れないと完全に無名の新人だ」
「へえ~………、それはそれで…………、いや、待てよ…………」
ガミンさんの話を聞き、
ふと、俺の頭に浮かんだ、中央での俺の進み方。
これまで俺が進もうとしていた道は2つであった。
①白ウサギの騎士として、盛大に迎えられ、鳴り物入りで中央入りするパターン。
②白ウサギの騎士の名も実績も、中央行のパスポートすら捨て去り、文字通り一から中央でもう一度狩人を目指すというパターン。
①は白ウサギの騎士の名が重くのしかかり、どこに行っても注目される狩人生活が待っている。
②は注目されることはないが、逆に目をかけてくれる人もいなくなる。また、今まで築き上げた実績を捨て去るのも少々勿体ない気分。
しかし、ここで生まれるかもしれない第3の選択肢………
「ガミンさん。もし、俺がこのパスポートに『白ウサギの騎士』の実績を入れずにいたら、何か不具合はありますか?」
「不具合って………、そりゃあ、辺境でろくすっぽ成果を上げていないのに、お情けで中央行を許された無名の新人扱いされることだろ」
「お情け………って、そんなことあるんですか?」
「無い訳じゃない。白翼協商じゃあ、ほとんど無いが、どこの秤屋にも特別枠ってのがあるんだよ。後は中央行が決まってからチームが解散した場合とかな。チームで得た実績はリーダーが独占して、残りの連中は実績ゼロのまま中央行のパスポートだけが手元に残る………ってな感じだ」
「それってオッケーなんですか?」
「時と場合によるさ。その他のメンバーも中央でやっていけそうなら認めるし、そうでないなら中央行自体を取り消しするだろうな。バルトーラの街の秤屋は、優秀な狩人を中央に送り出すのが使命だからな」
「う~ん…………、それなら………、いけるか?」
「…………おい、ヒロ、何を考えている」
俺をジロリと胡乱な目で見てくるガミンさん。
どうやら何となく俺の考えを見抜かれた様子。
だが、ここで隠しても仕方がない。
どのみちガミンさんには協力を仰がなくてはならないのだ。
「いや、その…………、中央に行っても当面、このパスポート(仮)のまま、無名の新人『悠久の刃』ヒロでやっていきたい、と思いまして」
「はあ…………、やっぱりそうか」
ガミンさんは肩を落として、大きくため息をつき、
「そんなに注目されるのが嫌か? 俺も得意と言う訳じゃないが、ほんの少し我慢していれば済む話だぞ。それで中央での狩人業がグッと楽になるんだ。決して悪いことだけじゃない」
「それは………、そうなんですが………」
俺は頭をカキカキ、
どこまで話せば良いのやらを、少し悩んだ末、
少し突っ込んだ事情を語ることにする。
「ガミンさんも知っての通り、俺って、普通じゃないんですよね。あまり注目され続けていると、ボロが出るって言うか……、下手をすると、異物として排除されそうになるかも………、だから、正直、人前にもあんまり出たくないんです」
「ふむ? ヒロが普通じゃないのは俺も理解しているが………。お前のことだから、中央に行ってもどうせ大人しくできんだろ。どの道一緒じゃないか?」
「その、中央に慣れるまでの時間が欲しいんです。俺もずっと『白ウサギの騎士』を放って置くつもりはありません。必要になればその名を利用するでしょうし、いずれデータも統合します。でも、中央に着いてすぐではありません。しばらくの間、無名の新人『悠久の刃』のヒロとして活動したいんです」
これが俺の考えた第3の道。
無名の新人として活動しつつ、必要に応じて『白ウサギの騎士』の名も利用。
俺が『白ウサギの騎士』であることはガミンさんの一筆が効果を発揮してくれるであろう。
『白ウサギの騎士』の雷名が必要な時は、『うだつの上がらない無名の新人であったヒロは、実はあの『白ウサギの騎士』だったのだ!』と名乗りを上げる。
普段は正体を隠しているヒーローみたいで格好良いのではないだろうか?
まるで水戸黄門の印籠のごとき…………は少し言い過ぎか。
でも、良いとこどりなのは間違いない。
無名の新人が飽きたなら、白ウサギの騎士に戻れば良いのだ。
その頃には俺も中央に慣れているであろうし………
これで俺が中央で懸念していた『目立ち過ぎる』問題が解決。
何の不安も無く中央に行くことができる。
そんな俺にとって都合の良い『悠久の刃』と『白ウサギの騎士』の使い分け案。
ガミンさんはムゥと考え込むような態度でしばらく無言。
じっと俺と白兎が見つめる中、
ガミンさんが出した答えは………
「しょうがねえなあ! 分かったよ、ヒロの案を認めることにしよう」
「やった! ありがとうございます!」
「だが、白翼協商の上には報告しておくぞ。流石に黙ったままはできんからな」
「はい! それで構いません………、はあ~、良かったああ!」
嬉しさのあまり、白兎とハイタッチ。
俺が翳した手に、白兎がピョンと飛び上がって手と手をパシン。
白翼協商の上層部に、俺が『悠久の刃』と『白ウサギの騎士』を使い分けすることが知られても問題無い。
どうせそんな雲の上の偉い人、俺が関わり合うことなんて無いはず。
バルトーラの街では少々目立ち過ぎてしまったが、
中央ではその辺に気をつけて、つつましく狩人業に勤しむつもり。
1番では無く2番手以下を。
主役では無く、美味しい所を持って行く脇役を。
英雄なんて柄では無い。
少し名が知られた程度の腕利きで十分。
東部領域にいるエンジュに俺の名前が届く程度で良いのだ。
俺は俺と俺の周りの人だけが幸せであればそれで満足。
赤の帝国を滅ぼす、とか、人類の生存圏を広げる、とか、
世界の謎を解明する、とか、なんて興味がない。
俺は俺の為に生きるのだ!
目指すは、『豪華で安定した生活+ハーレム+ウタヒメ』……ではなく、
『色んな街に恋人を1人ずつ置いて、グルグルとローテーションで訪問する、海の男みたいな生活』!
……………まあ、ハードルはなかなかに高いけど。
でも、夢だけは大きく(俺基準)ありたいよね。
俺の卒業式はそれで終わり。
ガミンさんとミエリさんに礼を言いつつ、白翼協商の事務所を出る。
そして、隣接する販売店に足を運び、メンバー達の報酬で足らない分を購入。
今の俺はお金持ち。
多少の散財など気にならない。
お金の余裕は心の余裕に繋がるのは間違いない。
懐が温かいと言うのは、心まで温かくなってくる。
「これで何の憂いも無くなった。あとはボノフさんのお店で晶石合成を依頼して、メンバーに報酬を渡して………」
フルフル
『ガンマンさんの卒業試験と、アルスさん達とのお別れ会、あと、宝貝の材料も回収するんだよね』
「ああ、そうだな。でも、宝貝化できそうなくらい仲良くなっているのって、精々、バッツ君とか、ルークとか………、ガミンさんにはもう『ダブルの晶石』をもらっちゃったから、もう一度くれとは言いづらい…………、あ! ミエリさんに頼むの、忘れてた!」
パタパタ
『マスターは忘れっぽいなあ。やっぱりもう1回白翼協商の事務所に来ないとね』
「う~ん………、ミエリさんに怒られないかな? 『調子に乗り過ぎです!』 みたいな?」
フリフリ
『誠意を持って頼めば大丈夫じゃない? きちんと向き合って話せば分かってくれるよ』
先の言い争いの事も忘れて和気藹々。
和やかな雰囲気のままバルトーラの街中を進む俺と白兎。
今後の予定を話し合いつつ、ガレージへの帰途に就いた。
『こぼれ話』
2つ名が周りからの評価なら、チーム名はチーム自体が目指す夢を指すことが多いようです。
また、所属する組織に因んだ名前も良くあります。有名なのは『白の教会』と深い関係にあることを表す『白』を含むチーム名。
ただし、この『白』をチーム名やクラン名、兵団名に入れるのは『白の教会』のお伺いが必要。正式に決まっていることでは無く暗黙の了解ですが、滅多なことでは認められず、『白』の名を冠するチームや猟兵団はそれだけで超一流の証明とも言えます。
もちろん許可を取らずに名乗る者いますが、周りから圧力をかけられて変更されることとなるでしょう。
※明日の投稿はお休みいたします。
次話の投稿は8月2日(土)になります。
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