会社員と海の子守唄(4)

宿に泊まって翌日にでもなればまた腹が減る。朝から海鮮スープをいただき、満足気の俺とアスカ。


「さぁて……今日は何をすっかなぁ。」


「昨日のリベンジ?」


アスカがシャドーボクシングをしている。シュッシュッとなかなかいいパンチ出してるな。


「面倒なことに巻き込まれそうなんだよなぁ。」


男たちが両腕にお揃いの黒い蛇……何かの集団だと思うからなぁ……


個人が集団と戦って勝てるのは一騎当千の武士だけだよなぁ。


「彼らがどんなヤツらか分からないから、止めとこう。そんなことよりまだまだ美味いものがあるだろうからな。それを探すか。」


「ラジャー! では、昨日行けなかった魚市場の散策にレッツゴー。」


笑顔のアスカと一緒に俺は魚市場へと歩いて向かった。


魚市場はとても賑わっていた。魚を売る漁師や商人と、新鮮な魚を求めて目利きしている人たち。体格の良いお兄さんが威勢のよい声を出してお客を呼び止めている。


「何処に行く?」


お店の数もお客の数も多く、俺たちは何処のお店に向かって進めばいいか分からなくなってきた。


「う~ん。とりあえず威勢の良いお兄さんに話しかけてみるか。」


俺は魚市場で元気な声を出しているお兄さんに話しかけた。


「らっしゃいらっしゃい! お、兄さんうちの魚どうだい? あげたての新鮮よ!」


「聞きたいんだけど、ここの魚を買って食べられるところある?」


「もちろんあるよ! 奥に行くと海を見ながら食事できるよ! ここで買った魚を持っていくとその場で捌いてくれるよ!」


へえ! すごいシステムだな。海を見ながら食事って言うのもなかなかオツじゃないか。俺が驚いていると魚屋のお兄さんが勧めてくる。


「宿に持って帰るよりもここで食べて行ったほうがいいよ。海を見ながらってのはなかなか味わえないし、今なら運がよかったら巨大な魚が見れるよ。」


「巨大な魚?」


「あぁそうさ。海の守り神と呼ばれている魚が迷い込んでしまったみたいでよ。時々水面近くに顔を出してくれるのよ。」


へぇ。珍しいこともあるんだな。


「普段は漁をしている俺らでも会えない魚だからな。最近は食事処も人が多くて席を取るのが難しいんだぜ。」


「そうなんだ? じゃあ、もぅ満席?」


「今から行くと満席かもしれないが……ウチの魚を買ってくれると二人の席を準備しておくぜ。」


「そんなこと可能なの?」


「ウチだけの特典だ。それも今だけ。ブラブラ他の店を見るなら他の客に勧めさせてもらうぜ。さぁどうする?」


「商売上手だねお兄さん。分かった。二人分の魚を買うよ。」


「あい、まいど! おい、2名様だ。席取ってきてくれ! お兄さん、魚は色んな食べ方があるからね。様々な食べ方が出来るように何種類か入れとくよ。食事処でこのまま渡してもらったら、おすすめの料理法で作ってくれるぜ。」


威勢の良いお兄さんは近くにいた男の子に声をかける。男の子は『はい!』と返事をして奥に向かって走っていった。


その姿を見ているうちに、お兄さんが植物で出来た籠の上にたくさんの魚を乗せてくる。それぞれ美味しい食べ方があるそうで……


「やり手だねお兄さん。じゃあその籠に入れてくれたの全部もらうよ。」


俺は苦笑しながらお兄さんの勧めるままに魚を大量に購入してお金を払う。この勢いで食べていたらお金がすぐになくなってしまうぞ。また頑張って稼がないと。


俺とアスカは二人して籠の魚を奥へと運んでいく。


「お客様! こっちです!」


さっき走っていった男の子が大きな声と手を振って誘導してくれる。


「席は海が見やすい席にしときましたよ。」


目の前にはザザーと静かな音をたてて波が打ち寄せる砂浜が広がっている。


「僕、ありがとう。」


男の子にお礼を言っていると、食事処の定員がやってきて籠と魚を回収していく。


「テーブルに乗り切れないかもしれないからね。頑張って食べとくれよ。」



昨日に続いてお腹いっぱいになって動けないかも……


俺はこの街にいる間に太ってしまわないかと早くも心配をしてしまう。気をつけよう。


俺とアスカのグルメ旅はまだまだ始まったばかりだ!

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