会社員はⅩⅨ日目になって旅をする(2)
「よく来てくれた、デコト・ボーコ殿。アスカ殿。貴殿らのおかけで、我らの先祖にあたるサクラ様の遺品が無事に発見されたこと、感謝する。そして貴殿らに感謝の印として報奨を渡すことにした。受け取ってくれたまえ。」
ざわざわ……
立食パーティーの様な会場で、多くの人に囲まれていた領主のクラトスさんは、俺たちが会場に入った途端、人混みをかき分け、さっきのような言葉をかけながら笑顔で近づいて来た。俺はクラトスさんだけに聞こえるように小さな声で尋ねる。
「……あの、この会場に集まっている人たちは?」
「近隣の領主や貴族達だ。こうして時々は集まって色々と話しをしている。せっかくの集まりなのでな、明るい話題のひとつでも提供しようと思ってお前たちを呼んだのだ。」
クラトスさんは二つ持った酒の入ったグラスの一つを俺に渡してくる。俺はそのグラスを受け取り、クラトスさんと乾杯をしてお酒を飲む。
「さて、先ほどの褒賞についてだが、先ずは刀だ。もうすでに渡しているが、正式にデコト・ボーコ殿の物となった。サクラ様から大事に使って欲しいとのことだ。そしてこれが報奨金だ。そして、最後に……デコト・ボーコ殿に依頼を頼みたい。」
渡された袋からはジャラッとした音と重みで大金が入っているようだ。筋トレに使えそうなぐらいのお金ってどれだけ大金なんだ。喜びで顔がにやけそうなのを、表情金をフル活用して真面目な表情で尋ねる。
「依頼……ですか?」
「あぁ。私の領でも魔物が暴れていたが、ここに来てくれている他の領主の街でも魔物の被害が出ているのだよ。それぞれの領でも冒険者が魔物退治を行っているが、魔物が増えた原因が分からないことも多くてな、手をこまねいている状態だ。そちらに赴いて原因を探ってきてほしい。」
「はいは~い! 困ってる人がいるなら助けるよ!」
「おい、アスカ……まぁ、冒険者だし、頼まれたら行きますけど……。」
「おぉ! そうか。デコト・ボーコ殿助かりますぞ。」
クラトスさんの表情からも長いこと悩んでいるのが伝わるような表情をだったし。話をしていた時から手伝おうと思っていたが、俺だけじゃなくてアスカもやる気があるようだ。まぁ、出来るだけのことをやってみるか。
「また、詳細は明日にでもセバスから伝えるようにしておく。今日のところは以上だ。数日は移動にかかるだろうから、旅の準備だけは済ませておいてくれ。」
そう言って、クラトスさんは俺たちの側から離れ、他の領主や貴族たちの元へと戻っていった。
俺たちはセバスさんに連れられ、立食パーティーの場所から抜け出すことに成功した。カグヤはどうやらこのまま立食パーティーに参加をクラトスさんから命じられたようだ。ご愁傷様です。
よし、明日にならないとどんな場所か分からないが、とりあえず旅の準備だな。アスカと二人分で……数日分くらいでいいのかな? 何が必要なのか分からないから、とりあえず店を探して買い物だな。
「とりあえず、美味しいものでも食べない?」
「そうだな。緊張してたから感じなかったけど、すげぇ腹減ってきたわ。とりあえず、いつものお店でランチデザート付きでも食べるか?」
「そうしよ! そのあとは屋台で買い食いするからね!」
「また、腹が痛くなっても知らねぇぞ。」
「ふん。食える時に食うのがダ・イ・ジなの。さぁ、いっぱい食~べよ。」
「食いすぎて動けなくなるなよ。買い物がメインだからな。」
ディーとアスカは、新しい旅に向けて準備を進めていったのだった。
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