会社員はⅪ日目に簡易キャンプへとたどり着く
「よし、お前ら。忘れ物はないなぁ?」
翌朝、俺とカグヤ、アスカの三人は街の出入口になっている門の前で集まった。何故か仕切り出したアスカを無視をして、俺たちは簡易キャンプへと向かう。
簡易キャンプには、ゴブリンを倒して金を稼ごうと多くの冒険者が集まっているらしく、馬車が行き来しているからか、道らしきものが出来ていた。
簡易キャンプに着くまでは、カグヤがオロオロとおびえていたが、街から簡易キャンプまでは、ゴブリンの姿は見なかった。アスカはゴブリンと戦えなかったことを残念がっていた。
俺はフラフラと歩いているだけで簡易キャンプに着いた。簡易キャンプと呼ばれているが、組み立て式の建物や魔物が襲ってこないように壁が周囲を囲っているので、充分に街として機能していけそうだ。
とりあえずギルドへと向かう。近くの冒険者に聞いて教えてもらう。そこに向かうと、多くの冒険者が入っている建物があるので、たぶんあれだろう。
「いらっしゃい! 3名かい?」
あれ? ここは食堂か? 店員さんらしき人に元気よく挨拶される。
「そうだよ! 席あいてる?」
アスカも同じく元気に応える。確かに、お腹空いたなぁ……じゃなくて!
「その前に、ここって冒険者ギルド? なの?」
「あぁ、新人さんかい? そしたら、奥のカウンターに行きな。マスターがいるよ。」
そう言われ、奥を覗いて見ると、カウンターがあるのはあるが……明らかにバーカウンターだ。
とりあえず向かうか。
奥のバーカウンターには身体のごつい、厳つい表情をしている男性がグラスを拭いている。
「すいませ〜ん。貴方がマスターさん?」
アスカは奥のバーカウンターまで走って聞きに行く。
「うん? 俺がマスターのブードルで間違いないが……誰だお前?」
グラスを拭いていた男性はグラスを置いて、アスカに向かい合い、話しをしている。あの体格で睨まれたら身体がすくみそうだが、アスカは平然としている。
「ギルド長のナルディアさんから手紙をもらったので、見てもらえますか? ほら、ディー、早く紙を持ってきて。」
俺の方をみてアスカが急かしてくる。俺はマスターのブードルに見られながら、ナルディアさんからの手紙を渡す。
「何なに……ふ〜む……なるほど。ナルディアの紹介なら案内しよう。俺に付いて来い。」
そう言って、バーカウンターから出てきたマスターについて建物を出ていく。マスターに付いていくと、マスターは簡易キャンプの外へと出ていこうとする。
「えっ、ちょっと! マスター。」
「うん?」
マスターは足を止めて振り返る。
「外に行くんですか?」
「あぁ。ナルディアの手紙に書いてある鍛冶屋は偏屈爺さんでな。森の中に家を作って住んでやがるんだ。」
「森の中って……」
俺は目の前に広がる森を見つめる。道らしき道もない。その鍛冶屋は、どうやって暮らしているんだろうか。
「まぁ、とりあえずこのまま付いて来い。もうすぐだからな。」
そう言って、マスターはまた歩き始める。
仕方ない。とりあえず付いていくか。
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