会社員は七日目に森を調査する (1)
久しぶりにハーベストの皆に会える。
気持ちが弾むせいか、足取りがいつもより軽い。
マッパさん、メイさん、リツさん、プリンちゃん。
あぁ。早く会いたいな。
街を出てしばらくすると、森の入り口付近に何人かの男女が座り込んでいる。
「だ、大丈夫ですか。」
「何とかな…他の連中は?」
「ギルドにいた冒険者が少なかったので、もうしばらくしたら、応援が増えると思います。」
「そっか…俺達も調査してたが、武器が壊れたり骨が折れたりして動けないんだ。応援が来るまでは、しばらくこのままだ。」
「ハーベストの方々は何処にいるんですか?」
「ハーベストは俺達みたいな傷ついた冒険者を逃がすために森の中で戦ってくれている。今も森のどこかにいるだろう。」
流石、ハーベストの皆だな。
「なら僕も森の中に行きます。」
「気をつけろよ。いつもの森じゃねえぞ。」
「分かりました。行ってきます。アスカ、行こう。」
冒険者に声をかけてアスカと一緒に森に入る。
「ねえ!」
アスカが急に声をだす。
「アスカ、どうしたの?」
「どうしたの、じゃないよ。焦るのは分かるけど、森の中は危険だよ?2人で行けると思ってんの?」
「森の調査をするんだろ? 森の中に入っていかないと…それに、ハーベストの皆も森の何処かにいるんだよ?」
「はぁ。」
アスカがため息をつきながら首を振る。
「私達2人で奥まで行けると?ムリだよ。初心者なんだよ私達。森で戦闘したことあるの?」
「大丈夫だよ。アスカ。何とかなるって。」
「何とかなる訳ないじゃん!」
アスカが腰に手を当てて、怒りだす。
「さっき、座ってた冒険者達を見てないの?ディーより絶対!ぜえぇったいに、冒険者ランク高い人たちが戦えなくなってるんだよ!それにさ」
アスカはさらにヒートアップして、こちらに腕を伸ばし、指差しながら
「その貧弱な装備で何が出来るの?ディーが死ぬと私もいなくなるんだからね!分かってるの?」
そこまで言わなくても…
「装備は貧弱で、冒険者ランクも低いから心配してくれるのも分かるけど、やってみないと分からないじゃん。」
「それで死んでもいいって言うの!?」
「死ぬつもりなんてないよ。あれこれ足りないって、初心者の冒険者は皆足りないものばかりじゃんか。買うお金も無いんだし。なら、これでやるしかないじゃん!」
「コツコツやっていく方法もあるよ?ここで危険を犯す必要あるの?」
「ハーベストの皆は森の奥で戦ってるんだよ?俺だけここで指を咥えて待ってる訳にはいかないんだよ!」
「ゆっくり強くなればいいじゃん。」
「ゆっくり?1人でゆっくり強くなるなんて出来るの?」
「…分からないわ。でも、方法はあるんじゃない?」
「そんな可能性の低いことするぐらいなら、俺はチャレンジしたいんだ!」
「命かけてもいいの?死ぬよ?」
「今の俺にはアスカを守るチカラがない。…だから、それをかけないと初心者の俺は強くなれないと思うんだ。」
「ディー…」
アスカが目もとを潤ませてこちらを見つめてくる。
「アスカ…」
2人の間に沈黙が流れる。
それはアスカのため息と共に破られた。
「…わかった。けど、いきなり森の奥には行かないこと。先ずは森の浅いところで敵を倒して様子をみること。余裕を持って対処できてから奥に行くこと。いい?」
「アスカ…ありがとう。」
「さぁ!決まったんだからさっさと行動するわよ!」
「あぁ!行こうぜアスカ。」
2人は森の奥には進まず、森の異変を探るように、森の周囲を歩きだした。
緊急クエストの内容が変更となりました。
・緊急クエスト『森の様子を探る』
森の周りを歩き、ギルドに報告する
成功報酬:魔力の素
難易度 難しい → 適正
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