第43話〜シルとライム

…………。


『……なぜ、こうなった』


『『(…………)』』


「びゃっくん、すごい」


湿地帯を抜けてしばらく。


わたしたちの距離感はグッと近付いた。


ほぼゼロ距離に。


地面を歩く白夜ちゃんの頭の上に、ライム、シル、そしてわたし。


とんだ鏡餅だね!


ルナちゃんも大喜び。


「ふふ」


あんまり表情に出てないけど、こっちを見て目をキラキラさせてる。


もふもふもいいけど、スライムはスライムでクセになる感触。


たまりませんな!


そしてルナちゃんの笑顔、プライスレス!


(°▽°)〜♪


けど仔猫の白夜ちゃんの頭に乗るにはちょっとシルもライムも大きすぎるかな?


ライムの身体が白夜ちゃんの頭を包み込んじゃってるし。


『ええい、鬱陶しいわ!我が輩を誰と心得る!』


「びゃっくん」


「ぴょ!(猫ちゃん!)」


『『(…………)』』


『くっ、早く人間になり、魔王に戻りたい…』


今人間になりたいって言った?


なんか元の世界のネタにそんなのあったような?


『……まぁいい。さっさと街に向かって拠点を作り、着実に力を付けるぞ。テイムしたスライムがいればだいぶ時間を短縮できるはずた』


「びゃっくん、シルとライムだよ」


「ぴょ!(名前を付けたんだから呼んであげて!)」


『なぜ希少種とはいえスライムごときの名前を呼んでやらねばならん』


「びゃっくん…」


『くっ!……えぇい!』


あー、ルナちゃんの悲しそうな感情が伝わってくる。


こうやってダイレクトに感情が伝わってくるから、白夜ちゃんも強く出れないね。


あ、白夜ちゃんがそっぽ向いた。


「ぴょ!」


わたしはジャンプしてルナちゃんの猫耳の間に着地!


『がぽぽぽぽ⁉︎』


あ、反動でライムが白夜ちゃんの頭を完全に飲み込んじゃった!


…………。


『くっ……。まさか魔王たる我が輩がスライムごときに死にかけるとは』


『(…………)』


ああ、ライムが申し訳なさそうにぐんにゃりしてる!


「ぴょ〜(ライムは悪くないよ。ごめんね、わたしがジャンプしたから…)」


『(…………)』プルプル


あ、小刻こきざみに震えてる。


これはいいんだよって感じかな?


それにしてもスライムってほんと身体の形を自在に変えられるんだなぁ。


…………。


改めてシルとライムについて分かってることをまとめようかな。


シルがテニスボールくらい、ライムがソフトボールくらいの大きさ。


色はシルがほぼ透明で光の加減で白銀になって、ライムは透き通った水面みたいな青色。


シルの能力は【浄化】。


汚れとかをきれいにできるよ!


他にも色々できるみたいだけど、白夜ちゃん曰く【浄化】は使える人がほとんどいないくらいの貴重な力なんだって。


ライムは水を生み出したり操ったりできるみたい!


水を生み出すことができるってことは飲み水には困らないってこと!


浄化で身体を清潔に保つことができるし、飲み水には困らないし、旅をするには最高の能力だね!


ちなみに契約したことで、シルの透明なスライムボディの上に白銀色の、ライムには蒼い王冠みたいなのが乗ってるよ!


王冠というか指輪?みたいなやつだね。


テイムされた生き物には首輪みたいな契約の証が現れるみたいなんだけど、スライムには首がないもんね。


わたしの場合は足環だったし。


ともあれ、仲間が増えてにぎやかになってきたよ!

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