お出ましの情報


「ブレンダです、お久しぶりですね」とブレンダさん。


 この後、いまトウキョウのクローイさんの部屋にいること、ブレンダさんとしては、親友の望みを何とかかなえてやりたい、そこで沙織さんにも力を貸していただけないか、と、切り出したのです。


 ブレンダさんは、

「メイド任官課程のニライカナイ研修で、スペースコロニー1にいる?当分帰れない……そうですか……」

「ミコ様はその間は休暇、オディールに通っておられる、えっ、近頃、甘味処にはまっている?」


「日曜には御一人で?十一時ですか、朝からスウィーツを食べるものはいないから空いている、わかりました、そこで勝負するのですね」


「今度の日曜日、オディールの近くにある甘味処、『あずき茶屋』の開店早々十一時に、お出ましになる確率が高いそうよ」

「とにかくそこで勝負をかけるしかないそうよ、あとは誰かが必ずお側にいると考えられる」


「それに例の通達はもうすぐ時間切れ、内緒だけどカナダ自治政府は、協力すると考えられるとのこと」

「まぁそうでしょうね、カナダメイドハウスの充実はたびたび持ち上がる話ですし……」


「クローイ、ぐずぐずしているとチャンスを逃すわよ!」

「周囲はすべて、貴女の昇格を認めているらしいのよ」


「それに沙織さんの話では、イシス様が、『覚悟と実行力のないものは仕方ない』と云ったとか、愛人様たちの評価が、このようになるのは時間の問題とのことよ」

「そうなったら絶対に、昇格は無理ね」


「ブレンダ……」とクローイさん。


 ブレンダさんが、

「大丈夫、きっと上手いシナリオがあるわよ」

「私の経験上、かなり恥ずかしい事を、しなければならないでしょうけど」


「……私、どんなことでもして見せるわ!」とクローイさん。


 ブレンダさんが、

「とにかく下見に行きましょう、それから作戦を練りましょう」


 『あずき茶屋』はオディール女学館とトウキョウメイドハウスのほぼ中間にあり、小さなお店でした。

 とにかく二人は入って、日本のスウィーツを食べてみました。


 クローイさんが、

「『クリームあんみつ』って初めて食べたわ、案外においしいわね♪」


 ブレンダさんも、

「私も『小倉トースト』って初めてよ、癖になりそうね♪」

「ミコ様は何を頼むのかしら?」とクローイさん。


 ブレンダさんは、

「さあ、今度ご一緒したいわね、とにかくまずはクローイ、ここで口説くのよ、フェロモン全開よ、幸い座敷もあるわ、なんとしても、二人で座敷に座るのよ」


 クローイさんが、

「わかったわ、必ずお誘いするわ、なんかアドレナリンが出てきそうよ、これは戦いなのよ、私の全てがかかっているのよね!カナダの女の真価をお見せするわ!」

 居直ったようなクローイさんでした。


 計画によれば、やはり人目があるので、ここでは口説くだけ、閨はクローイさんの部屋、ということなのですが、果たして目論見どおりに行くのか、クローイさんの豹変に、一抹の不安を感じたブレンダさんでした。

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