17 オリジン-12-

「娘は――ティレルは? 生きているのだろうな?」

 ああ、どうか無事でいてくれ。

 一縷の望みにすがるように彼の眼差しはオリジンに答えを迫った。

「今も生きている。B17区に放し飼いにしてある。健康状態は良好だ。睡眠時には56番ボックスを割り当てている」

 この際、放し飼いという表現には目をつぶる。

 娘は生きている!

 その報せだけで彼には充分過ぎた。

「会わせてくれ! 娘に! いや、お前が止めても必ず探し出す!」

「会ってどうする? 彼女はお前を親とは認識しない。それに会ったところで意味はない」

「機械のお前に分かるものか! 人間はそんな単純な生き物じゃない!」

 オリジンは首元のネジを少しだけゆるめた。

 彼には人間が一個人として持つ感情や思考を理解できない。

 稀に不思議な現象が起こるのだ。

 たとえば人間の99%は暗闇や高所を本能的に恐れるが、たった1%だけは喜んでそれに向かっていく。

 習性や傾向は数千年分のデータとして蓄積しているので、その確度は揺るがない。

 だがこうした突然変異種の発生はいつまで経っても予測ができない。

 そしてまずいことに大抵、このマイノリティが問題を起こす。

「準備が整ったようだ」

 オリジンは正面の巨大モニタの映像を切り替えた。

 一面の黒に、赤や白の光が帯状に広がっている。

 神秘的な映像にカイロウは舌打ちした。

 美しい景色でも観て気分を落ち着かせろ、とでも言うのだろうか。

「娘に会わせろと言っているんだ。星空を見たいんじゃない」

 人を食った言動にはうんざりだ。

 カイロウは銃に手をかけた。

 人間とちがって脅しに効き目があるとは思えないが、他に手は思いつかなかった。

「これよりピリオドを打つ」

 オリジンが静かに言ったのを聞いて2人は気付く。

 浮かび上がったのは夜空に輝く星々ではなかった。



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