第16話 敬愛

夕日に照らされている校舎の中は授業が終わった生徒たちで賑わっていた。


「先輩一緒に帰りましょー!」


「おお、小波か。いいぞ」


「やったー あっそういえば今日は春佳先輩一緒じゃないんですね」


「そうなんだよ、姿が見当たらなくてさ」


「じゃあ今日は私が彼女ですね!」


「そう言いながらさりげなく手組むのやめて小波恥ずかしい」


「そんなに私とくっつくの嫌ですか?」


「いやとかではないけど…」


「じゃあオッケーですね!私今日寄るとこあるので一緒に行きましょ♪」


「はい…」


琢磨は唯に言われるがまま近くのショッピングモールまで同伴する事となった。


「しっかし小波は身だしなみにすげー気を遣ってるよな」


「基本の事ですよ、基本」


「俺小波のそういう努力を惜しまないとこ、凄い尊敬してるよ」


「…あ、あ、あっちの店に用事あるんで行きましょう」


「また顔赤いけど大丈夫か?無理するなよ」


「アナタノセイデスケド」


「ん?なんて?」


「い、いえ大丈夫です。早く行きましょう」


2人は服屋で時間を過ごした後、ショッピングモールの中にあるレストラン街で食事を済ますことにした。


「あっ、あのたこ焼き買ってきていいですか?」


「おお、たこ焼きかいいな」


ガラス張りの向こう側には、額に汗をかき白いタオルを巻いているガタイの良い男性が器用にたこ焼きをひっくり返していた。


「すみません、たこ焼き6個入り1つお願いします!」


「あいよー」


しばらくしてカリカリの生地に青のり、ソース、マヨネーズ、かつお節が乗った食欲をそそるとても美味しそうなたこ焼きが出てきた。


「あれ、これちょっと個数多くないですか?」


「彼氏さん様におまけだよ、分けて仲良く食べてな~」


その言葉に応答がなかった琢磨は不信に思い、唯の方へと視線を移した。その視線の先で小波唯は体をプルプルと震わせていた。


「(まずい小波が怒ってる)て、店員さん僕たち全然そんなんじゃ」


「ありがとうございます!」


「えっ」


「さ、行きましょう


唯はそういいながら琢磨の手を掴みその場を後にした。

クラスメイトによると、それからしばらくの間唯の機嫌が今までに見た事がないほどよかったとか。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネット上の男友達が実は美少女JKだった件 だちょ @datch0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ