第15話 すれ違い

「今日こそは先輩に猛アタックするぞ、、、」

そう呟くと小波唯はつい最近新しく買った石鹸の匂いがする香水をワンプッシュうなじにかけ、少しパーマのかかった髪をヘアアイロンで直し万全の状態で自宅を後にした。


「(最近はあの人あの人春佳がいつも琢磨先輩のそばにいるせいで全然話かけれてないな、もしかしたらもうあの2人は付き合っていたり…)」


そんなはずはない、そう自分に言い聞かせる様に小さく呟きさっきよりも少し歩く速度を速め学校に向かった。

「(にしても春佳先輩、ずっと琢磨先輩といるよなぁ…先輩はその気持ちに気付いてるのかな)」

そんなことをぼんやりと考えている途中、唯はある場面を目撃した。そう、『人違いだと思ったらやっぱり春佳、お前だったんかい!って何か俺悪い事したかな?いやお前の存在自体が罪だ』事件だ。


「(何があったかは知らないけど、これはチャンスだ)」


唯は小さくガッツポーズし、琢磨の元へと駆けて行った。


「先輩~!おはようございます~!」


「お、ああ小波おはよう」


「今日は彼女さんとはご一緒じゃないんですね~?」


「ばっ、お前そんなんじゃないって」


「へぇ~」


「なんでそんなニヤニヤしてんだよ?」


「別に~なんでもありませんよぉ~」


「(良かった、まだ付き合ってないんだ)」


「それより、浮かない顔してますけど何か春佳先輩とあったんですか?」


「…お前見てたのか」


「てへっ」


「(可愛い…じゃなくて)カイトのやつ、なんか素気なくてさ」


「何かまたやらかしたんですか?」


「いや、それが困った事に全く覚えがないんだ」


「先輩は無意識に人の心をもてあそんでるからなぁ~」


「人聞きの悪い事を買ってに言うな、小波」


「えー、だって実際そうですし」


「お前な~…あれそういえば小波、髪普段と違うな」


「あっ!気付いてくれましたかぁ~」


「おう、なんかいい匂いもするし大人って感じしてすげー似合ってるよ」


「……」


「小波?どうしたって…お前顔赤くないか?!大変だ急いで保健室に」


「…先輩の、バカ」


小波は小声で言うと琢磨の元からウサギの様に跳ねながら逃げていった。


「俺、今日厄日だったかな~」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そっか、私達ってただの友達だもんね…」


いつの間にかポツポツと振り出していた雨。綺麗な桃色のした彼女の頬は濡れていた。

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