懺悔

朝日奈

懺悔

 懺悔します。主よ。

 私はとんでもない過ちを犯しました。

 私は人を殺しました。

 それも私にとって、最も親愛な人物を。

 ああ、私はなんて愚かなことをしてしまったのでしょう。

 主よ。どうかお聞きください。そして、どうか私をお許しください。



 私は双子の一人としてこの世に生を受けました。

 私たちはそれはもうとてもよく似ていて、実の親ですら時々見分けるのが難しいくらい、そっくりでした。

 それ以外にも、私たちにはよく似たところがたくさんありました。

 服装、髪型、それに趣味や性格までも似通って、いえ、同じといってもよいでしょう。

 とにかく、私たちは何から何まで同じでした。

 周りの人は私たちを判別しづらいと不満を漏らしていましたが、私たちはそのようには少しも思いませんでした。

 私たちはとても仲がよく、常に行動を共にしてきました。

 それはもう、人が羨むくらい仲が良かったんですよ。

 時々けんかをしたりはしましたが、すぐに仲が直ってしまいました。

 まぁ、性格が同じなのだから、考えることも一緒、同じ結論に行き着くことなどは当然と言ってもいいんですがね。

 とにかく、私たちはずっと一緒に成長してきました。

 一緒にいて後悔したことなど一度もありません。

 ええ、ありませんとも。

 私たちは一緒にいるのが当たり前だったんですから。

 そう、一緒にいても違和感のないくらい、当たり前のことだったのです。

 しかし、私たちはあまりにも長く一緒にいすぎた。

 いえ、先程も言ったように、一緒に過ごしたことを後悔したことなどありません。本当です。

 ただ、私たちは性格も、思考すらも同じなのです。

 私たちは一緒にいればいるほど、だんだんとどちらがどちらなのか分からなくなってきてしまったのです。

 訳が分からないとお思いでしょう。しかし、どうかお分かりになってください。

 私もあの子も同じ容姿、同じ性格。まるであの子は鏡が写す私の様。

 私は私。でもあの子でもある。あの子も同じことを思ったでしょう。

 そして、私たちはついにとんでもない考えに至ったのです。

 私は私でありあの子である。それならば、身体は二つもいらないのではないか、と。

 私たちは同じ時に同じことを思い、そして同じ行動を取りました。

 同じ行動とは、不要なもう一つの身体を壊してしまうということ。

 私たちは互いに互いの身体を海に突き落としました。

 しかし、私だけは、海に飲まれず、浜に打ち上げられました。

 意識を取り戻したとき、私はあの子を殺してしまったのだと気づき、すぐにここにやってまいりました。

 これから警察へ行こうと思っています。

 罪は償わなければなりません。

 しかし、その前に、主よ。

 どうか、どうか教えてください。









 私は一体、どちらなのですか―?







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懺悔 朝日奈 @asahina86

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