ピースジュエル

@goajun

第1話 オクターブ

突然ですが、神様ってどこにいると思います?

空の上?海の中?天界?

はい、神様はそれらの様々なところに住んでいます。

ところが、1人変わった神様がいましてね、10代の子供の中に住む神様がいるのですよ。

子供が喜怒哀楽を感じるのを近くで感じたいだとかなんだとか…

自分の体に何か知らないのがいるって気持ち悪いって感じるかもしれません。

けど、この神様が住んでいる時、その子供はとても人生が上手くいくのです。みなさんの身の回りにすっごい運の良い人とかいませんか?サッカーでシュートするたびに入るとか、鉛筆転がしが毎回当たるとか。

もしかしたら、その子にはこの神様が住んでいるのかもしれませんよ?

そして、この神様が住んだ後の子供には‘神の残り香’が残るらしいのです。


これは、‘神の残り香’を持つ子供を巡る物語です。


混雑している電車をやっとこさ降り、改札を出る。周りに人はそれなりにいるものの、とても静かだ。

みんなスマホを触ったり、神妙な顔つきをしていたりして、夜だからなのか、いきいきとした顔をしている人はいない。


階段を降りるとついしてしまう癖がある。それはふと母親の車を探すことだ。俺は今年、第一志望の東京の大学に無事現役合格し上京したのだが、上京する前は母親が毎晩駅まで迎えに来てくれたものだ。ここには、シンジと自分の名前を呼び、車の中に入れてくれる母はいない。


大学にもしっかり合格したし、人生上手いこと行っているはずなのに何かもの寂しいものだ。


小学校の時は、パタパタと階段を飛ぶように駆け下り、車に飛び込んだ。それが今となっては、ずしずしと重い足取りで階段を下っている。キャッキャキャッキャと騒ぐこともなく、出るのは重いため息だけだ。


パッと、夜空を見上げた。 

そこには秋の中旬の満月が眩しいくらいに輝いていた。

そういえば、昔、上弦の月の名称を初めて知った自分は母親に得意げにあれが上弦の月だよって話していたなぁ。

何もかもがオクターブ下がっている…と、そんな風に感じた時だった。


「神谷真司さんですね?」


突然のことに咄嗟に「は、はいっ!」と答えてしまった。


そう答えたと同時に見上げていた空が満月の輝きを遥かに越して輝く。あまりの眩しさに目を必死に閉じたのだった。


数分後、目をなんとか開け、周りを見渡した。


どうやら、俺は、神殿のような建物の中にいるようだ。ここがどこか理解が追いつかず困惑している俺の背後から柔らかい声が飛んできた。


「突然失礼致しました。私は神の遣いです。人がそう、天使と呼ぶ存在に当たるかしら。変に聞こえるかもしれませんが、少し話を聞いてくださいな。」


そう言われて、胡散臭さを感じながらも、目の前の女性のあまりの美貌に圧倒されて話を聞くことにした。


「あなたは‘神の残り香’を持つものです。」

「神の残り香?」

「はい。あなたには、昔、神が少しの間住み着いていて、その跡のことです。」

「え…は?神様がどうして俺の中になんかに住むのだ…?」

「それは神の気まぐれです。あなたは過去にとてもなにもかもが順調な時がなかったですか?」


そう言われてみると、高3の時は成績がとても伸びたり、色んなことが順調だった気がする。


「まあ、心当たりないことはないかな…」

「それはあなたの中に住んでいた神様の力のおかげなのです。」

「いや、けど、信じろって言われても無理があるかな…」

「まあそうでしょうね。とりあえず、私があなたをここに呼び出した理由だけでも聞いて頂けませんか?」

「まあ、それだけなら」

「ありがとうございます。あなたをここに呼び出した理由はピースジュエルが盗まれてしまったからなのです。」

「ピースジュエル?」

「それを含めて今から、起きたことを順序話していきます。昔、自然は今のように穏やかではなく、風は荒れ、雨は洪水を引き起こし、地球はとても人間が暮らせる環境じゃなくなっていきました。そうなれば、当然、争いが起きます。人々は自分が生き残るために他人を欺き、殺し、それはそれはとても醜いものでした。これに心を痛めた神々はどうにか自然を穏やかにしよう思いました。そこで、当時、地球上にいた賢者3人を集めて、人間と協力して作ったのがピースジュエルです。ピースジュエルはメインの真の宝玉、そしてサブには、火の宝玉、水の宝玉、緑の宝玉、風の宝玉、大地の宝玉の5つがあり、これらには神々の力が込められています。

こうして、人間は平和に暮らすことが出来ていたのですが…一ヶ月前のある日、ピースジュエルが盗まれてしまったというわけです」

「なるほど。それで、残り香とピースジュエルにはどういった関係があるのだ?」

「神の残り香を持つものたちにピースジュエルを取り返して来て欲しいのです。」

「神様が直接行った方が早い気がするのだけど…」「それが、神々が入れないけど、人間なら入れる領域にピースジュエルがあると現在推測されているのです。」

「なるほどね。だが、俺は、無力な大学生だぞ?俺がピースジュエルとやらを取り返すことは到底出来るとは思えないね。」

「だからこそ、残り香を持つ人を選んでいるのです。残り香を持つ人々は神の能力によりその残り香の能力を解放することが出来ます。残り香には様々な能力があります。例えば、火を操れたりとか風を操れたりとかです。」

「分かった。じゃあ、神様が俺の残り香の能力をもし本当に解放させることが出来たのなら、あなたの言った今の話を信じる価値はありそうだな。火を操れたりなんて普通じゃ無理だしな。」

「理解が早くて助かります。では、こちらの部屋に来てください。あなたの能力を解放させましょう。」

天使に言われるままに部屋に入り部屋を見渡した。とても大きい部屋だが、そこには誰もいなかった。特徴をあえて言うとすれば、部屋の真ん中に大きな立方体の石があったことだ。

天使と名乗るものが大きな声で言った。


「神様、連れて参りました。」

「よろしい」

頭の中にまで響き渡る声がした。これが神様の声なのだろうか?

「では、能力の解放を君にしよう。部屋の真ん中にある石に手を触れたまえ。」


ここまで来たことだし、言われるままに石に手を触れてみた。特に何も起きないなと思いながら10秒くらいしたときだった。ふいに頭痛がして、石から手を離してしまった。


天使が俺を支えてくれながらこう言った。


「能力の解放は終わったようですね。私があなたの能力の詳細をお伝えしましょう。」


天使が俺の能力を調べているのか、長い沈黙が訪れた。


「能力の診断が終わりました。あなたの能力は目視できる物体と物体の位置を変える能力です。どうやら、少しでも見えていたら、その対象に含まれるそうです。」

「その能力はもう使えるのか?」

「はい、またあなたの能力は生物にも適用されます。」

「えっと、なんか呪文みたいなのは必要か?」

「あら、言い忘れてましたね。これといって決まった言葉はないのですが、あなたが念じたとともにあなたが何かしらの言葉を言う必要があります。」

「分かった、じゃあ、そのまま、テレポーションと唱えるとするか。」


ふーと息を整え、目の前にある石と自分の位置が変わるように念じ

「テレポーション!」

と唱えた。


一瞬目の前が白くなったかと思うと気がつけば、自分と石の場所が変わっていた。


「すげぇ…」


思わず、言葉が口から溢れてきた。


「これで、私の言ったことを信じて貰えるでしょうか?」

「あぁ、信じるしかないだろ、すげぇよ!」

「ありがとうございます。」

「これで、えっと、俺は今から冒険に出る感じなのか?」

「いえ、冒険に行くのは選抜に勝ち残った人たちだけです。」

「選抜?誰と戦うのだ?」

「同じ、残り香を持つ人たちとです。数日したら、またあなたを呼びます。そして、そこで選抜の詳しいルールを伝え、選抜を始めます。今日はもう疲れたでしょう?家でゆっくり休んでください。」


その言葉を最後に次第に意識が消えていった。そして、目覚まし時計が鳴るのと共に目が覚めると俺は自分のベッドの中にいた。


「朝か。昨日のは夢だったのか…?」


とても不思議な気持ちで迎えた朝だった。



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