怖そうで怖くない、少し怖い話 ~Juon of Junji~
これはねぇ、去年の夏にアタシの部屋で起こった出来事なんですけどねぇ。
ある夜、仕事から帰ってきたアタシはいつものようにパソコンを起動させて、Webブラウザを開いたんです。
さあて、今日はどんなサイトをサーフィンしようかなと思って、検索画面を開く。
画面の空欄をクリックするとね、今までの検索履歴がずらーっと並ぶでしょう?
その中にね、一つの妙な単語があったんですよ。
『ミツケタ』って。
それを見たとき、アタシの背筋にぞわーって鳥肌が立った。
『スク水 画像』『緊縛調教』『堕ちた人妻』『マジックミラー号』『ミス栃木県 個人流出』とかの単語に混じってぽつんと、『ミツケタ』って検索履歴がある。
いやいやいや、絶対にアタシじゃあない。
アタシは絶対に、そんな単語なんて検索してないんです。
よしんば『ミス栃木県 個人流出』で目当てのものを見つけたって、あらためて『ミツケタ』なんて入力、アタシは絶対にしない。
うわー怖いな怖いなーって思いながら、アタシはパソコンを切った。
そんなものを見ちゃったあとで、お気楽にネットサーフィンなんてできるわけがないからねぇ。なんだか誰かに見られてる気がして、まぁ萎えちゃったわけだ。
そんでアタシはもう寝ようと思って、電気を消して布団にガサーッと潜り込んだ。
ところがね、真っ暗な中でじーっと目を瞑ってても、一向に眠気がこない。
たぶんその時点で、アタシは何かを予感していたんでしょうねぇ。
しばらくするとだ。『うぅぅ、うぅぅぅっ』てね、女の啜り泣く声が聞こえ始めた。
なんだか漠然とした恐怖に襲われながら、アタシはゆーっくりと顔を上げた。
するとアタシの枕元にはね、なんと一人の女がボーッと立ってた。
それがなんだか薄汚れた服を着ててね、若い女か老婆だかも見当が付かない、なんーとも不思議な様子をしてる。
うわー怖いなー怖いなーって思ったけど、よーっく見てみるとその女、意外とイケる顔をしてたわけだ。
見ようによっちゃあ、ミス栃木県に見えないこともない。
着物も薄汚れてるが、その隙間から覗く鎖骨は結構いい感じなわけだ。
アタシも60を超えてるが、まだまだ男だ。衰えちゃあいない。
萎えていた男の魂が奮い立ってね、アタシは布団をバサーッと引っぺがした。
「いっちょうお相手願いますか」とアタシは言ったんだ。
夏場だったからね、こっちは下着一枚ですよ。
アタシのアタシもすっかり臨戦態勢ってわけだ。
するとね、女は「うぅぅわあぁっ」て声をあげた。
恨みみたいな怯えみたいな、それが何とも言えないいやぁな声だったんですよ。
でもその声を聴いたアタシはなんだか、とーっても良い気分になってきた。
前の日に『緊縛調教』で検索した動画を見て張り切ったから、たぶんその余韻みたいな、グワーッとしたものが残ってたんでしょうねえ。
だからまあ、「ちょっと来てみなさいや」って話になった。
色々と立ち上がったアタシは、ゆっくりと女の方へと近づいてったわけだ。
すると、女は「うええあああぁ」って、なんとも不気味な叫び声をあげてね。
フーッ……と消えちまった。
いやいや、見間違いなんかじゃない。
女の姿はぼぉんやりと、煙みたいに宙に消えちまった。影も形も残っちゃあいない。
アタシはどうしたものかと思ったんだけど、もう男の魂が燃え上がっちゃってるからね、なかなか寝直す気にはなれない。
アタシは部屋の電気を消してパソコンを立ち上げ直し、検索画面を開いた。
ところがね、どーぉもおかしい。
さっきまで並んでいた履歴の中からね、あの『ミツケタ』が消えてるんです。
ぞわーっと、アタシの背筋に鳥肌がたった。
さっきまで確かにあった『ミツケタ』が、フッと消えちまった。
うわー怖いな怖いなーって思いながら、アタシは改めて『着物 鎖骨』で検索した。
変に気分が高揚してたからねぇ、その晩のアタシはグォーッと燃え上がった。
あとで聞いた話なんですが、どうやらアタシの住んでるアパート、戦時中は大きな防空壕だったらしいんだねぇ。大きな爆弾が落ちてきて、たくさんの人が生き埋めになったらしい。
きっとあの女は、何かでどうにかなった何かのアレだったんでしょうねぇ。
あるんですねぇ、そんな話っていうのがねぇ……。
SSS ~しょうもない・ショート・ショート~ 天宮伊佐 @isa_amamiya
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