突然ですが今あなたがここで死んだとしましょう。天国への階段が目の前にあります。そこで天使に訊かれます。「何かやり残したことは?」
本作の主人公、勇者エッドはそんな「未練」に想い人を据えます。聖者メリエール。それが彼の愛した人です。
エッドはそんな彼女に想いを伝えないと成仏できません。でも恋。恋です。皆さんも覚えがあるでしょう。好きな人に好きと伝える。これほど難儀な任務もありません。
でもそうこうしているうちに、メリエールが……この先は実際に読んでもらいましょうか。
考えてみれば分かると思いますが色恋は生の喜びです。生きる営みとしての感情なので、それはそうでしょう。
でも本作ではその営みを死者が行っています。理から外れていますね。でもそこにヒントがあります。
壮大な話になりますが、人類がここまで発展できたのって「遊び」という概念があるからだと思うんですよね。理性だけで済ませない、感情の赴くままに「プレイング」することで生まれた余裕が人類をここまで繁栄させた。
本作は、そんな「遊び」の最たる例です。理性や論理……「理」から外れた様々な概念や行動、名言があります。
本作中の「理性」であるログレスというキャラがいるのですが、彼は作中度々「イレギュラー」を行います。まさにこのことが「遊び」を象徴している。
そして、そんな「遊び」の先にあるものは、多分、「楽しい」って感覚なんじゃないかな。
死者が生き返って生者の営みたる恋愛を行う。
本作には他にもそんな矛盾というか、背反するものが美しく共存しています。
そんな二律背反が生み出すメロディは、やっぱり「楽しい」ものなんですよね。すごく心躍る物語、魂の潤う物語でした。
すごく極端な話、本作は「死者が人生を謳歌している話」って言えると思うんですよ。
死んで、一度失ったはずの人生。それを見つめ直す過程で、「どうやったら人生を楽しめるか」、読者はそんなことを考えさせられます。
エッドやメリエール含め、登場人物たちには多様な生き様があります。そんな彼らの人生の中に、「人生を楽しむ」ヒントがたくさん落ちています。
もしあなたが、今暗い池の底にいて、「もう死んでいるような」人生を送っているのなら。
本作のエッドのように、「一度死んだ」ということにしてみてはいかがでしょうか?
その先の人生(死んだ後にこの言葉を使うのもおかしいですが)の過ごし方は、本作が楽しく教えてくれます。
死んだような人生を送っているのなら、本作を読んで蘇ってください。
まだ楽しく生きているのなら、本作の「生者の営み」で心を潤し、生きる楽しさを実感してください。
どう生きるべきか?
そんなことを教えてくれる、エンターテイメントです。
これは、間違いなく面白い。
読了してからレビューは入れたい人間ですが、これは間違いなく面白いので途中だが入れさせてもらいます。
だって初っ端から面白いんですもん。
勇者のエッドが魔物に襲われてバラバラ(文字通りバラバラ)になるという修羅場から始まるというのに、サクッと読めてでも状況の深刻さは伝わってくる軽妙かつ巧みな文章力! ここからどんどん物語世界に引き込まれていく吸引力がすごいです。
ストーリーは冒頭で死んだはずのエッドが「未練」のため成仏できず、亡者としてまさかの現世帰還を果たしてしまい、彼はなんとか未練を果たし、無事天に召される手段を仲間と共に探していく……というもの。つまり何もテンプレでない。どっちかといえば突拍子もないストーリーです。なのに、なのにですよ、その突拍子さになんの違和感もなく読み進められちゃうのが、ほんとすごいです。
それは作者さまのこの物語世界への解像度の深さなのかな、と想像します。誰よりもこのストーリーとその結末、そしてキャラクターたちの心の動きがわかっている、だからこそ、それらを読者の心にできるだけわかりやすく鮮やかに届けようという努力に作品が満ちているんだと思います。自身の持つ独創的なストーリーを研ぎ澄ませながら、その中身を読み手により解像度高く届けようという力。クスリと笑ってしまうエピソードタイトル、キャラクターのせりふ、そのひとつひとつからその機敏を感じます。つまりどこまでも独りよがりにならない。これってなかなかできることじゃないと思うんです。
そして、その奥底にあるのは、作者さまのこの作品への愛じゃないか、と。作り手の愛に満ちた世界を堪能することほど楽しいことはないと思うので、これはとても読んでて嬉しいことです。
あー、もっと語りたいですよ、あのキャラとか、このキャラとか、あそこのエピソード、それに見え隠れする深いテーマと人間愛。でもまだそれを語るのは途中では烏滸がましく。なのに、もどかしいですが、こうとだけ言って締めます。
作者さまの頭の中にだけあるはずの物語を、ここまで楽しく、色鮮やかに共有できる喜びを全身で感じ取ってほしいです。それって「おはなし」を読む喜びの根源だと思うので。
おすすめです。これは間違いなく面白いです。
勇者の称号を持つ剣士エッドはある時、魔物の強襲を受けて死んでしまう。
衝撃の冒頭から始まる物語は主人公が生き返ることから始まる。但し、亡者として。
確かな死を迎える為には「未練」を果たさなければならない。
この冒頭だけで気になりませんか。私はすごく気になり、絶対に面白いと確信しながら拝読した物語にあっという間に夢中になりました。
亡者となってしまったエッドを待ち受けているのは自分が魔物として討伐されてしまうことです。
しかも未練の対象が、亡者となったエッドには天敵とも言える聖術師なのですから。
幼馴染の闇術師、ログレスと共に亡者となったエッドは未練を果たす為に動くのですが、この二人の会話がとても良いのです。半ば魔物となってしまったエッドに悲壮な雰囲気は見られず、ログレスとの絶妙な掛け合いに笑わされてしまいます。
二人だけではなく、この先に出会う登場人物とのやり取りも心温まる話があり、中には読んでいて思わず、微笑ましさに頬が緩んでしまう程。
色々あってメリエールに告白する、という目的が果たせそうになったかと思えば……とこの後に続く展開には息を呑みっぱなしでした。
「想い人に告白をする」ラストクエストの難しさに読者としてはハラハラの連続でした。
勇者の在り方、魔物の存在、討伐の為に生きてきた人々の人生……など色々なエピソードが詰め込まれている物語は読んでいて飽きません。
ひとりひとりの心情や些細な動作に至るまで丁寧に書かれているので読んでいて苦になる場面がないのです。
それでいて騙された!と驚かされる場面もあり、彼らの世界の中に深くのめり込んでいくような感覚がありました。
この物語を読んでいて思うのは日常の愛おしさがふとした瞬間に溢れることです。こんなにも日常は愛おしいのだと淡い光に包まれる感覚があるのです。
そして忘れてはならないのが主人公エッドは「亡者」なのです。人ではなくなってしまった主人公がラストクエストをクリアすることが出来るのか。この先、訪れる結末を是非、見届けて欲しいです。
最後まで読んだ時、私はこの物語に出会えて良かったと思いました。
衝撃の冒頭から始まるファンタジー。心が満たされる物語に出会えたことを心から嬉しく思います。
途中まで読んでの感想ですが、すごく優しくて心温まる雰囲気がいっぱいに詰め込まれている物語だなぁと思っています。
まず主人公がとても魅力的。相手のことを想い、慈しみの心がセリフにも行動にも表れている。勇者ながら亡者になってしまったという設定も独特で感嘆ものなのです。
彼の周りに集まる仲間たちも、たおやかでありながら芯が感じられる女性や、物言いに癖はあるけれども真意に友情があると確信できる術師、そして新たに加わる仲間も、素直で可愛らしく……
主人公の人柄(亡者に人柄?)がなければこのような仲間も集まらないでしょう。
物語世界は作り込まれていて、魔力や魔術など、ファンタジー好きを満足させること間違いなしです。
この先どうなるのだろう? そんな期待と共にこの先も読みたいです。
主人公である勇者が倒れ、亡者となって起き上がる衝撃の展開から幕を開ける本作。
「ちゃんと死ぬ」ために果たすべき未練は、仲間の聖術師の女性へ想いを伝えること。
近づくだけで文字どおり身を焦がす恋。属性相性最悪の想い人を相手に、まさに「決死」の告白クエストがいま始まる——!
まず、アンデッドとなった主人公・エッドの生きの良さがすごい。彼自身のポジティブなキャラクターのおかげで、物語全体のトーンが軽さと明るさで彩られています。
幼馴染の闇術師・ログレスとの会話もウィットに富んでおり、不謹慎スレスレの亡者ジョークを交えながらのやりとりが楽しい。
サブキャラから脇役に至るまで、どの登場人物もあたたかな血が通っていて(※エッド以外)、読み進めるほど全員好きになってしまいます。
ただただパーティメンバーの女性に告白するだけの道のりが、こんなにも遠いなんて。
ヒロイン・メリエールとエッドとの間には、これでもかというほど数多くのハードルが立ちはだかります。それはもう次から次へと。
だからこそ、実感するのです。
大切な人に想いを伝えることの尊さを。
たったそれだけのことが、存在意義になり得るのだということを。
そうなると、「せっかく想いが成就したとしても、待っているのは永遠の別れ」という、矛盾を孕んだクエスト内容がなんとも憎い。
何度も胸が苦しくなりながら読み通した果て、まさかあんな結末が待っているとは思いませんでした。
一人でも多くの方に、あの景色に辿りついてほしい。
本当に素晴らしい物語でした。全力でおすすめです!!
この作品は、タイトルの通りなのです。
勇者様は命を落としました。けれど亡者として起き上がりました。
さて、そんな勇者様の最後の依頼は、何と想い人に告白することで――?
笑いあり涙あり。友情も愛情もぎゅぎゅっとたっぷり詰め込まれた作品です。
ここには、愛とやさしさがある。そう言っても過言ではないでしょう。
どのキャラクターも読み進めるうちに愛おしくて仕方がなくなるのです。
果たして勇亡者様は想い人である聖術師に無事に告白できるのか。告白なんて簡単かと思いきや、山あり谷あり昇天ありの、なかなか困難な道のり。
それでも彼はただひたすらに突き進んでいくのです。その『未練』を果たすために。
ああ、いいものを読みました。
皆様もぜひ、ご一読ください。
笑って、泣いて、また笑う。そんな愛に満ち溢れた異色の冒険譚!
今作はそんな物語の世界にどっぷりと浸かって、登場人物たちと共に旅してゆけるような傑作。
主人公の勇者・エッドは任務帰りに魔物の集団に襲われ、仲間を庇って命を落とす。まあいいか、激務続きだったし、天界はとても過ごしやすそうだ——と思っていたところに、まさかの「ちょっと待った!」が掛かる。
仲間の聖術師であるメリエールが蘇生術を施し、彼の魂は地上へ……抵抗を試みるも「未練」とやらのおかげで天界には行けず、しかも完全な蘇生ではなく亡者として蘇ってしまった——!?
彼の未練とは、メリエールに想いを告げる事。しかし亡者と聖術師はまさに水と油、ロミオとジュリエット……それくらい相反する存在。
幼馴染の天才闇術師ログレス、そして再会したメリエールと共に、もはやヒトではなくなってしまった自分の姿を受け入れながらこのラストクエストに挑む事に。
……と、書いてしまうと一見悲劇的ですが、そこはまあ最初のプロローグから読んでみてほしい。
とにかく魅力溢れたキャラクター達と、コミカルな会話の応酬、そして綿密に練られた世界観と設定。何より、主人公であるエッドの明るさが読者をその先へと引っ張っていってくれます。
途中彼らの出逢う新たな仲間達との絆にホロリとし、困難に立ち向かうときは手を握りしめてしまうほど。メインの二人だけでなく、他の誰かのエピソードも一つ一つが素敵なのです。
もしかしたら魔術書を読んでいたかな? と思わされるほどのセンスある言葉の羅列は、読んでいるだけでわくわくするほど。
滅茶苦茶面白かった!! これだけ書いたらものすごく陳腐に思われるかもしれないのですが……本大好きな人の中には経験がありませんか? そう、例えば『はてしない物語』の分厚くて大きな表紙を抱きしめて、部屋にひたすら閉じこもってどっぷりと物語の世界を旅したような、そんな経験が……。
まさしくこの作品は、そんな体験ができると断言できる"生きている物語"。
怒涛の展開のラストには思わず涙も……。
エッドはその未練を晴らす事ができるのか?
そして愛するメリエールの気持ちは?
さて勇者さま、いえ……勇亡者さま。ラストクエストのお時間です!
こちらの作品の冒頭は、勇者が魔物によって死亡、そして天国へ行ったところ、ヒロインの聖術によって、その勇者が亡者として生き返ってしまう!ということから進んでいきます。
そんな主人公エッドはある未練を叶えるため、またこの世で奮闘することになります。
その願いというのは、愛していたヒロイン、聖術師のメリエールに秘めた思いを伝える事。
亡者と聖術師、単純に考えると、どう考えてもうまくいくはずがありません。
そこが面白いところでもあり、この作品の要となっています。
ファンタジーならではの魔術や、神々、天使など、様々な事象や物事が細かく絡み合いながら二人がどんどん近付き、コミカルにそして時にはしんみりと進みます。そしてラストには、ハッピーエンドが待っています。
それまで紆余曲折があった分、エピローグでは泣きまくりました。
彼らを支えてきた、仲間達の活躍も多く描かれ、その個性豊かなキャラクターにも魅了されます。
そして、ファンタジーの醍醐味が物語から深く味わえる部分も素晴らしいところでした。
ゲームでもあるようなジョブ風に各人物達の職業が完璧に分かれており、その役割がはっきりしているところなど、魅力がたっぷりです。
ファンタジー×恋愛ものがお好きな方にぜひおすすめしたい物語です!
主人公は勇者。いろんなジョブの仲間と一緒にクエストをこなす働き者だったのだけど、依頼をこなし続ける毎日は疲弊を招く。ついに彼は敗北=死を体験する事になるのだけど……もう導入からびっくり展開。気持ちよく天に召されようという所を、引き留められ……結果、死んでるけど生きてるように動き回れる亡者として復活してしまうという。
亡者(アンデッド)といえば、倒されるべきモンスターですから、そりゃあもう目覚めたら早速、聖なる魔法で攻撃されちゃうわけで。
何故こんな事にーーのドタバタから、この状況を打開するには未練をはらすしかない! けれど! 彼の未練は仲間の聖術師に想いを告白できていない事だった!? 聖術師っていったら亡者の敵みたいなもので、ロミオとジュリエットの家の確執なんてミジンコの障害に思えるほどに、立ちはだかる高い壁。
仲間の闇術師(こちらは亡者と相性抜群ですね♪)と共に、打開策を求めて試行錯誤。いい感じになったと思ったら、次から次へと事件も発生。新しい仲間を加えつつ、毎エピソード退屈する場面なし。
勇亡者は課された最後のクエストを無事達成できるのか。まさに涙あり笑いありのエンターテインメント冒険譚。恋愛ジャンルですが、性別問わずに楽しめる傑作です。
任務からの帰り道、勇者さまは真っ二つにされて死んでしまいましたとさ、おしま……わない!! まさかの勇者死亡から始まる物語。この始まりだけでこれがいかに型破りな物語であるかがお分かりいただけるはず。
ブラック労働に疲れ果て、死を受け入れようとしていた勇者エッドの蘇生を試みるパーティの一員で聖術師のメリエールは彼の想い人。しかしながら、エッドは彼女にその気持ちを伝えることができていません。うんうん、存在が近すぎると、そして大きすぎると、かえって告白はできなくなりますよね。今の関係が大切すぎて壊したくないその気持ち、わかる、わかるよエッド。それはさておきその「未練」のせいで、エッドはまさかの亡者、つまりアンデッドとなって復活してしまいます。亡者といえば地上を彷徨い歩くかつて人だった魔物。そして聖術師は亡者の魂を浄化して速やかに天界へ送る使命を帯びています。亡者と聖術師、相反する存在同士のこの恋の行方はいかに……!?となってしまうところですが、それだけではないのがこの小説の素晴らしいところです。
亡者となったエッドの頼もしい友人であり天才闇術師のログレスを初めとした(敵味方問わず)魅力的なキャラクター達、このほのぼのが永遠に続いてほしいと思ってしまうスローライフパートと、対照的に手に汗握るバトル、過去から続く人と魔物の戦いの歴史。エッドとメリエール、それぞれの献身。これらが物語を彩り、次へ次へと読み進める原動力となっています。
死んでなお明るく元気で前向きな勇者エッドと限りなく優しくて真面目だけど頑固なメリエールがたどり着いた結末はとは!?
何層にも重ねられた物語が織りなす最高のエンタテイメントをぜひ、ご堪能ください。
最高の読書体験でした。自信をもっておすすめできる作品です。
序盤から主人公のエッド・アーテルが魔物によって死亡するという衝撃的なシーンから始まる本作。でも安心してください。エッド本人が明るい性格で、迎えに来た天使がコミカルなのでコメディチックに読めるシーンです。
勇者としての激務に疲れたエッドはこのまま天に召されることを望みますが、聖術師であるメリエールの手によって蘇生術を施され、両者の力が拮抗した結果、半端者の「亡者」となって蘇ってしまいます。
成仏するには彼の未練をはらさなければいけないらしいのですが、その未練とは聖術師であるメリエールに想いを告げること。だけど聖者と亡者(魔物)では聖なる気に阻まれ触れることすら許されない。メリエールに想いを告げる為に彼のラストクエストが始まる。というお話なのですが。
ところで皆様がエンタメ作品に求めるものは何でしょう。笑いあり涙あり、燃えるものあり面白さもあり…こちらの作品にはそのエンタメ要素がギュギュッと全部詰まっています。まずはとりあえず3話ほど読んでみてください。
軽快でコミカルな筆致とテンポの良い場面展開。恐ろしいほどにかっこいい詠唱と共に展開される魔法バトルは手に汗握る程熱く、召喚術は脳内アニメで中二心が騒いでしまうほどにカッコいい。肉体的なバトルシーンだけではなく、巧妙な駆け引きやどんでん返しも細かく仕込んであり、私は闇術師ログレスと魔人によって行われる「奴隷問答(お互いに謎掛けをしあい、負けた方が奴隷になる)」がお気に入りです。魔法や魔術のことを知らないはずなのに、読んでいて両者の知識の深さと機転が本当に面白かったです。
熱いバトル、魔術の知識による頭脳戦、コミカルで時には爆笑してしまう文体でテンポよく進んでいきながら物語は後半へ。前半も面白いですが、後半はさらに面白く、同じテンポのまま最後まで一気に駆け抜けてくれます。
後半は特に生死について考えさせられることが多くなります。聖術師と亡者という相容れない二人。エッドは間違いなく死んでいて、魔法によって万事解決なんてご都合主義には頼りません。死とは何か。生きるというのはどういうことか。エッドの生前や亡者となってからの記憶が語られ、メリエールとエッド、両者のセリフに重みが増します。物語の中で徐々に明かされていく「死と救済」の意味を知った時、涙が止まらなくなりました。
最後は読者の期待を裏切ることなく万感の終幕。ここまで読んだ方には文句のない良いラストでした。
ここで忠告です。この作品を読む時、ラストを先に読んではいけません。オチを知っただけではこの感動は得られない。エッドや仲間達と共に苦楽を共にして最後まで旅を続けてきたからこそ、そしてこの物語における救済の意味を知ってこそのカタルシスです。つまらない好奇心でそのチャンスを無駄にしてしまうなんてこと、読書好きの方はもちろんやりませんよね?
オチが気になる方はどうぞ、時間を取ってどっぷり浸かりながら読んでください。45万字ありますが、テンポが良いのでスルスル読めてしまいます。
死ぬことは何か。生きることは何か。
そして人を愛するのはどういうことなのか。
読者の問いに真正面から答えをぶつけてくれる作品です。
ぜひ多くの人に届いてほしい素晴らしい物語でした。
中堅勇者のエッド・アーテルは、魔物にばっさり切り裂かれ、天に召される。よほど忙しい毎日だったのだろうか、天界では安らげると信じた彼は、躊躇なく死を受け入れた。が、それを引き留めたのは仲間の聖術士。強力な蘇生術であれよあれよとエッドの魂を地上へと引きずり戻す。「夢の天界暮らしが、待ってるっ……! 俺はもう、引退するんだっ……!」と抵抗するエッド。さすがは勇者、彼の魔力は蘇生術とぶつかり合い、結果として蘇生術は失敗に終わる。さりとて彼が天界暮らしにありつけたわけでもない。魂は地上へと呼び戻され、不完全な蘇生術は彼を亡者として蘇らせたのであった。え、どういうこと?
問題は次の通り。彼は躊躇なく死を選んだにもかかわらず、なお生への未練を残していたということ。そのことに死ぬまで気づけなかったのだ。
しかし死んだ途端に気づく。自分が、誰を、どれほど深く愛していたのかということに。そして直面するのが、亡者は、その愛する人に近付くことがとても困難だという切ない事実だった。
愉快で軽快な書き出しに反して、この物語が抱える問いは深い。そこには人間の生と死を裏側から見つめようとする真摯な眼差しがある。死にゆく定めの人間が、その限りある命の中で、幸せを求めているのだという切実な事実に向き合わなければならない。
エッドは未練を晴らすことができるのか?
その未練は本当に晴らしてよいものなのか?
明るい筆致と緻密な計算に裏打ちされた、ビターでポップな物語。王道を斜めからぶった切ったような状況と、全方位に見晴らしがよい魅力的なキャラクターで彩った冒険ファンタジーを、一緒に楽しもう!
(アニメ化したら絶対成功する作品なので、制作会社の皆さま、早い者勝ちですよ?)
冒険の途中で勇者が死んでしまったら教会で蘇生してもらう――という、RPGによくあるセオリーを逆手に取った、超個性的な冒険ファンタジーです。
シリアスな筋がユーモアあふれる筆致と賑やかなキャラで描かれていて、飽きずにぐいぐい読めちゃうのが魅力。
物語は、「勇者」の称号を持つ主人公エッドが魔物の凶刃に倒れ、天の国へ召されるシーンから始まります。ブラック企業さながらの過剰労働に疲弊しきっていたエッドは、未練なく天界へ向かうつもり、だったのですが。そこに待ったをかけたのは、仲間の「聖術師」メリエールによる強力な蘇生術でした。
天界へ逝きたいエッド、逝かせたくないメリエール。両者の魔力で綱引き状態のところに、天使は告げます。
「……当局と致しましては、“未練”がおありになるお方は、天界へとお連れできません」
こうして、すんなり成仏できなかった上に、うっかり蘇生術に抵抗してしまったエッドは、正常な蘇生をすることができず、亡者(魔物)として棺桶からコンニチハする羽目になってしまいます。
実はエッドの未練とは、心から想う女性に告白することで、その女性というのが聖術師であるメリエール。信仰心が深く生真面目な彼女に、魔物と化したエッドが近づくこと自体が命懸け(死んでるとはいえ)なのですが。
幼馴染みで親友である闇術師ログレスの協力を得て、勇者であり亡者である勇亡者エッドは、聖術師メリエールと「お話し」をするため、彼女を拐おうと計画するのでした。
自身の死という絶望的な始まりながら、根がポジティブなエッドと淡白ながら仲間想いのログレス、愛情深いヒロインズや脇を固めるユーモラスな住人たちのお陰で、とても味わい深い冒険譚を楽しむことができます。
シリアスを増すストーリーの中できらめく救済のすべは、優しさと献身によって導かれた、万感の終幕でした。
どっぷり浸かれる物語、ぜひご一読ください。