第458話麗は頭痛、それを知られたくない

九条ビルの見学を終えた麗は、少し頭痛を感じた。

そのため、高輪の家でやりたいことがある、との理由を言い、九条ビルを出た。

葵も一緒に出て九段下駅まで歩くけれど、路線が違うので、麗はようやく自由になる。


麗は、ホッとするけれど、なかなか頭痛はおさまらない。

どこか薬局に入って、頭痛薬を買うべきと考えた。

「俺の頭痛は、一旦始まると、なかなか、おさまらない」

「少しクラクラもして来たけれど」

「こんな顔を可奈子さんに見せたくはない」

「心配をかけたくない、俺の不始末で、彼女が責任を感じるのは嫌だ」


幸い、白金高輪駅で降り、直近に大手のドラッグストアを発見。

悪寒を感じながら、ドラッグストアで頭痛薬を買う。

しかし、とても家まで歩けるような気力がない。

ふらつきながら、駅に戻りカフェに入りダージリンを注文、椅子に座る。

「今は紅茶よりも水、そして頭痛薬」と2倍に服用、しかし、効きはじめるには一定の時間が必要、なかなか頭痛と悪寒はおさまらない。


それでも、麗は、白金高輪でよかったと思う。

「こんな姿を京都で見られれば、何を言われるか、わからない」

「九条の後継さん、倒れそうでした、可哀相に」なら、まだいいけれど「弱々しい後継さんや、長年続いた九条家さんも、先は短い、情けない」になるのは、必定。

そして回復したとしても、当分は「心配するフリだけの人」に、「大丈夫です、ご心配をおかけしました」と頭を下げなければならない。


「あの京の街では、風邪一つでも、嘲りや争いの材料」

「口では心配するようなことを言いながら、内心は、その逆」

「お見舞いの順序だって、家の格とかを無視したら、いつまでも呆れられ、酷くなると口もきいてもらえなくなる」

「見舞いの金額、物も、格上の人の邪魔にならないように」

「その時点で、見舞いの行為まで、格上と格下の見識争いになる」

「見舞う人同士で、病室のドアを誰が開けるかも、格上と格下の、重大な守るべき、しきたりがある」


それでも薬を飲んで30分、かすかではあるけれど、頭痛がおさまって来た。

「これなら何とか」

麗は、カフェを出て、家までの道を歩く。


鞄の中の薬が気になる。

万が一、可奈子に見せたら、心配すると思う。

それが嫌なので、箱は捨て、中身だけにする。

「鞄の中身も見せられないな」

そう思うので、玄関に入っても、可奈子に鞄を渡さない。


まだ頭痛は残るので、ベッドで横になりたい。

「可奈子さん、申し訳ない」

「夕食まで、少し眠りたい」

「いえ、体調が悪いわけではなく」

「もともと、ものぐさな人間なので」

と言い訳、部屋に入り、そのままベッドで横になる。


眠りに入るのは、時間がかからなかった。

あっと言う間に薬からの眠気が頭痛に勝った。

麗は、身動き一つせず、寝入ってしまった。

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