第457話九条ビル見学(2)

5階は会議室が並ぶ。

高橋所長

「カルチャースクールとか、企業が会議にも使います」

「人数に合わせて、大きさを変えることもできます」

「予約制ですが、9割の稼働になっています」

確かに廊下まで講師らしき人の声が聞こえて来る。


麗は納得。

「9割程度でいいのかな、少し余裕が必要」

葵も同じようなもの。

「換気や清掃も大切と思うので」


高橋所長が補足する。

「基本的に、あまり極端な思想の学者、団体には貸し出しません」

「破壊活動を是とするような学者とか、団体も近くにありますので」


麗も、その方針を是とする。

「唯我独尊で、自分の意見を通すために、他者に属する財産や、酷いのは人体まで破壊することも問題ないとの考え方」

「確かに、そういう狭量な考えの学者や団体、国会議員にさえいます」

「九条家としては、認めたくない、協力はしません」


高橋所長は、安心したような顔。

「差し支えなかったら、その考え方を利用規則に採り入れても構いませんか?」

「何しろ、時折、そのような学者とか団体が来られます」

「すでに先約があっても、それを取り消しても、自分たちを優先しろとか」

「酷くなると、国会議員まで連れて来て、恐喝まがいに」


麗は、ここで考えた。

「強力な弁護士を雇いましょう」

「それと警察関係とマスコミとも、関係を強くする」

「今週の土曜日にも結論を出します」


葵が麗の顔を見た。

「麗様・・・今週の土曜とは?」


麗は説明。

「国会議員候補の方々と再度面談します」

「その際に、不動産から弁護士の方も来られます」

「彼も強力なタイプ、彼が来らたらいいし、それが駄目でも、強力な弁護士を紹介してもらいます」

「もちろん、財団推薦の総務省官僚の人にも、事情を話します」


高橋所長は、麗の言葉に驚いたような顔。

「さすがです、話には聞いておりましたが」

「ここまで、人を使うのが上手とは」

「誰も断らんと思います、むしろ喜んで協力すると思います」

「これで、このビルも安泰になります」


しかし麗は慎重。

「いや、それは問題が解決方向に進んでから」

「結果が出ていないのに、早合点は禁物」


6階に移った。

高橋所長

「この階は、書庫、雑庫にしてあります」

「これも、必要な設備になります」


麗も葵も特に言うこともない。

そのまま、事務所のある8階に移る。


事務所に入ると、高橋佐保が挨拶に来た。

「本当に良い職場を案内していただいて、ありがとうございます」

「麗様も元気そうで大活躍で」


麗は、実にやわらかな顔。

「また自由が丘の家に行きたいなと」

高橋佐保も笑顔。

「はい、いつでもお待ちしております」

「もう少し手の込んだ料理を作ります」

「麻央も、今は一緒に住んでいます」


その麗と佐保を見る葵は、目が離せない。

「うちとか京都の人と話をする時より、麗様がやさしい顔」と、不安を感じている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る