サヤ高校2年生 確信、そして
「うわーーー!!めっちゃ速いね!!しかもうるさい!!!!!」
隣で沙織が騒ぐ
うるさいよ、沙織、ちょっとブレちゃったじゃん!
「ごめんごめん、今通ったの杉村君?」
そうだよ、さっきのオレンジと白のマシンで、オレンジと黒のヘルメットの27番が杉村君
「このクラスで最年少なんだね」
パンフレットを広げながら沙織が言う
うん、このクラスは最高峰クラスの一つ下だから若い子が多いけどその中でも杉村君が一番若いね
てかさ、沙織、楽しい?
「な、何でそんなこと聞くの、楽しいよ!詳しいことわかんないけど、普段のあんた見てたらどんなんなんだろって思って着いてきたけど」
そっかならよかった
私はそう返し微笑んだ
「ねぇ、走行終わったよね、撮った写真見せて!」
いいよー、私はカメラを沙織に渡した
写真を見てた沙織が、写真をアップにして呟いた
「ん?このロゴ…」
沙織が見ていたのは杉村君のマシンの真ん中に貼られたロゴステッカー
1番目立つ所に貼られているからチームのメインスポンサー、1番出資額が高いスポンサーだ
ん?どしたの、あぁ、その会社有名だよね
「じゃなくてさ…」
沙織はそう言いながら財布の中から名刺を取りだした
「これ見て、ロゴ一緒だよね」
う、うん確かに一緒だね、
「うちのおじぃちゃんここの副社長なんだ」
え!この会社、普通にあちこちに店あるよね?
大手企業だけど、そんなの聞いたことないよ
「別に言うことでもなくない?」
いやまぁそうだけど、
「そうだ!さっきサヤが言ってたメインスポンサーって力強いんだよね?」
まぁそうだね、チームに出してるお金が多いから、権力で言うと強いね
私がそう言い終わると沙織は悪い笑顔を見せた
杉村君の母国レース、予選順位6番手から決勝レースでは大逆転でキャリア初の優勝を母国で決めた。
私はもちろん泣いた、自分のこと、いやそれ以上に嬉しかった
私が涙を拭いていると、
「サヤ!ちょっと来て」
沙織は私の手を引っ張り、観客席を離れた
沙織、どこ行くの。
「いいから着いてきて」
私の右手はグイグイ引っ張られる
もうすぐ表彰式が始まるその表彰台が近くに見えた
沙織が突き進む先は関係者専用入口
沙織そっから先はダメだって
「いいから」
沙織は突き進むが、もちろん警備員に止められた
だが、沙織は先程の名刺を見せた
すると、警備員は通してくれた
ちょ!ちょっと、沙織
「えへへ、さっきおじぃちゃんに電話したんだ、友達が杉村君の大ファンだからなんとかならない?ってそしたら表彰式見せてあげるって」
振り返りながら沙織が言う
私の胸の鼓動は急に早く高鳴った
杉村君に、会えるの?
しかもこんな記念すべきレースで?
私たちは表彰式の行われてるスペースまでやって来た
「おーいこっちこっち」
私達に声をかけてきたのは沙織のおじぃちゃんだった
「君かい?杉村君の大ファンは」
あ、はい、はじめまして、サヤです。
すいません無理言って、私、とても嬉しいです、こんな所普通の人入れないのに
「いいんだよ、いつも沙織がお世話になってるし、レース好きなんだろ?嬉しいなこんな若い子が興味持ってくれて、式終わったら杉村呼ぼうか?」
そう言われ私は頭が真っ白になった
「うん呼んで」
私が答える前に沙織がこたえる
え、ちょ沙織!
私は沙織の腕を引っ張った
「あんた、杉村君と話すために英語もスペイン語も勉強したんでしょ?」
沙織が悪い顔で笑う
表彰式が始まり、杉村君に、優勝トロフィーとウィナーズキャップが渡される。
ウィナーズキャップは優勝した人に渡される帽子の事
彼がシャンパンを開け、シャンパンファイトをする
私たちはそのシャンパンがかかる、とても近い所で、式を見ていた
一通り、インタビューを受け、杉村君が帰ろうとする
私も写真を撮り終え、ファインダーから、目を離す
すると、杉村君が被っていた帽子を脱ぎ、観客のいる私たちの所に投げた
高く舞い上がった帽子が私の頭の上に落ちてくる
帽子と重なるように横から手が伸びる
「はい!」
沙織が掴んだ帽子を被せてくた
「あんた、運動神経鈍いから取れないかなって思ってさ」
私はもう泣いていた、つばを下におろし深く被る
再び沙織に手を掴まれる
人混みをかき分けて進む、沙織が止まり、私は顔を上げる。
彼は私の目の前に立っていた
沙織のおじぃちゃんの横に立っていた
トロフィーを持って、まだレーシングスーツを着ていて、ヘルメットを被っていたせいで髪型がぐしゃぐしゃの彼が
私は背中を強く押された
ぐっと視界に彼が近づく、その距離4歩くらい
あ、あの、お、おめでとうございます!
私は大泣きしていた
もう感情がわからない、嬉しいのか、なんなのか
彼は持っていたトロフィーをチームスタッフに渡し、さらに私に近づいた。
「Gracias」
彼は無邪気な笑顔でそう言った
「あ、ごめんなさい、スペイン語練習したって聞いたんで」
私の緊張が少しほぐれた
でもまだ頭がぼーっとする
沙織のおじぃちゃんが杉村君にサインペンを渡す
「その帽子にしましょうか?」
彼が私に聞いた
え、あ、お願いします
私は帽子を脱ぎ渡した
彼は受け取ると、帽子のつばの裏にサインをしてくれた
「お名前は?」
そう聞かれ、ドキッとした
サヤです、ローマ字でお願いします
「サヤさん、わかりました」
私の名前を声に出し、丁寧に書いてくれた
「はい!っと」
彼は書き終わると、帽子を被せてくれた
もう私は顔を見れない
「ほら、サヤ顔上げて、写真撮るよ」
いつの間にか私のカメラを持っていた沙織が言う
彼は私の横に立ち、腰をかがめて、肩を組んでくれた
「はい、チーズ!」
写真を撮り終わると彼から話しかけてくれた
「今日はありがとうございます、あと、ココだけの話なんですけど、自分来年からmotoクラスにステップアップするんで来年もよかったら見に来てください」
え、motoクラスって…
そうバイクカテゴリーの最高峰だ
私が驚いて、もぞもぞしてると、スタッフが彼を呼びに来た
「すいません、時間みたいなんで、行きますね」
あ、ありがとうございます、来年も応援します
私がそう声をかけると笑顔で応えてくれた
「お似合いじゃん」
ぼーっとしてると、沙織が撮った写真を見せながら、私に言ってきた
満面の笑みで笑う彼と半泣きの私
写真を見て、私は思った
あぁ私この人じゃなきゃダメだ…
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