第6話 ライドオン

「忘れ物ないか?」


バイクにキーをさしてハルが聞いた


うん!ないよ!ちゃんと荷物全部持ったよ!


「そうか、ちょっと待ってな」

駐輪場から少し離れた所までバイクを押しエンジンをかける


ブォンブォォォン


体の芯まで響くいい音だいつまでも聞いてたい


ハルがヘルメットをこっちに持ってきてくれた


「被れるか?」


私はヘルメットを受け取り、被った

…が顎ヒモの締め方が…わかんない


わちゃわちゃしてると、ハルが目の前に来た

「ちょっと待ってろ」

私は距離が近すぎて恥ずかしかった



そ、そうだシールドおろそう

ガチャガチャ


シールドがおりミラーシールド越しにハルが見える

こちらからは見えてるが向こうからはこちらの顔は見えていない

ヒモを通し終わったハルが見えていない私の顔を見ながら「照れてんだろ見えてるぞ」と茶化した


嘘だ、見えてないのに


ハルもヘルメットを被った


ハルのヘルメットは真っ黒で後頭部に当時のゼッケン番号の27のステッカーだけ貼ってある地味なものだった


ハルが先にバイクに跨り、私に「いいよ、乗って」と声をかける


私はハルの肩を掴み、バイクに跨った。


跨ると振動と音が体の底から込み上げてくる


ハルが「後ろにつかまるステーが付いてるからそれ持っとけ」と指さしながら教えてくれた


「じゃあ出発しまーす」


ギアをひとつ入れる

バイクが少しガクンとなる


ゆっくりバイクは進み始め家の前の路地を抜け大通りの合流まで来た


なんだ案外余裕じゃん。後ろのステーにつかまってたら安定だ


そう思っていた


ハルが大通りにバイクを合流させるとスピードをあげた


だめだめだめ!落ちる落ちる!


私は加速に耐えきれず、とっさに前のハルの腰に手を回して両腕でぎゅっと抱きついた


ヘルメットの中がすごく熱くなる


ハルがそれに応えるようにアクセルをまたあけた


怖いのになんだろうこの安心感


どこまでもいつまでもこうしてたい



俺は腰に強い感触を感じた

やっぱり耐えれなかったか

と思いながらさらにアクセルを回した


やっぱり米より軽かったな。

練習の時より後ろの重みは気にならない

なんかシートベルトみたいで安心するな手回されてると



しばらくすると高速道路にのった



どこに行くんだろう。今日土曜日だよね?

お泊まりいつ以来だろ わくわくするなー


私は幸せな気持ちに体を預けて流れてく景色を見ていた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る