第5話 サプライズ
「はいはーい、お兄さんこちらですー」
俺の部屋のある階に着くと、サヤがドアを開けながら待っていた。
「奥までお願いしますーすいませんねー重たいのにー」
靴を手早く脱ぎ、キッチンの所まで運ぶ
ふぅー
不思議とあまり息はあがっていなかった。
まだ体力落ちてないんだ、そう思った。
鍋を突っつくサヤの後ろの箱をすっかり忘れていた事に、気づいた
サヤ、後ろの箱開けていいよ
と声をかけると
豆腐を食べながらサヤは振り向いた
「あぁーこふぇーふっとまえにほほいてたやつー」
豆腐を口に入れたまま返事した
サヤがハサミをとりに立ち上がる
「おっきいね、さぁー何が入ってるんでしょうか」
ちくわをかじる俺を見ながら言う
あえて何も返さない
「オープン!」サヤが勢いよく箱を開けた
箱の左にはまた箱そして右には袋
俺は戸惑うサヤを見ながら
さぁーどっちから開けるかな?
と聞いた
「こっち!」サヤが取りだしたのは袋の方だった
手早く開けてサヤはとてもビックリしていた
「これ!バイクウェアじゃん!え、誰の!?Sサイズ!もしかして!」
俺は頷いて興奮してるサヤを見た
今度の土日バイク乗せてやるよ
そう言うと、サヤはもう気が気じゃないらしい、テンションが上がりすぎておかしくなりそうだった
こりゃもうひとつの箱開けるとやべぇぞ
俺は鍋の火を消しながら思った
「ねぇ!ありがとう!めっちゃカッコイイね!」
早速、着ながら鏡を見ている。
サヤ、もうひとつの箱も開けて
俺が言うと
「あっ!、そうだった」
少し我に返ったサヤがハサミでもうひとつの箱を開ける
開けた途端、サヤは黙り込んだ
ん?どしたんだろ、俺がサヤの後ろから覗き込みながら箱の中を見た
うん、合ってる注文した通り
ヘルメットだ、俺のなら、俺の名前が(Haru)と入ってる所にサヤ(Saya)ってちゃんと入ってる
サヤ?
俺が声をかけるとサヤは俺を見上げながら、泣いていた
なに?泣いてんの?と笑いながら、聞くと
無言でヘルメットを箱から出し、呟いた
「これってさ、ハルが、5年前の世界選手権の、あのシリーズでチャンピオン獲った時に使ってたヘルメットだよね?」
あぁやっぱり覚えてたんだ
そうだよ?あれと全く同じデザインのサヤサイズのやつ
俺がそう返すと
「なんで?ねぇなんで、」
と俯きながら俺に聞いた
え、嫌だった?
「そうじゃなくて、なんで私にこのヘルメット?」
それは…と俺が言いかけた口を手で塞いで
笑顔で言った
「ごめん。ありがとう!感動しすぎて泣いちゃった。答え聞かなくてもわかるからいいよ!」
世界に1つ!私だけのものだぁ!
って叫びながら飛び跳ねていた
ったく忙しい奴だ、泣いたりするからこっちがびっくりした。
開けた箱を片付けている俺に
「ねぇハル!」とサヤが声をかけてきた
ん?
俺がサヤを見ると黒のマジックと白のマジックを持ってこちらを見てニコニコしていた
「晴樹選手!こことここにサインください!」
ったく
なんか懐かしいなと思いながら
俺は、はーいと返事をしながらヘルメットの後頭部に黒で、メタリック仕様のシールドの部分の端に白でサインをした
「ねぇ!サヤっていれてよー」
あぁはいはい
サインしたヘルメットの写真を撮っているサヤを見て思った
そういや現役の時サーキットで、サヤを見たことないし、写真もサインもしたことが無い
まぁいいっか 今してやったし
私は涙を堪えるのに必死だった
当時は恥ずかしくて、声もかけれなかったし、ハルの走ってない時の顔を見た事もなかった、というより見れなかった。好きとかじゃなくて、なんかこう…当時はすごく遠い存在だった。近づいたらイケナイ気がした
被るのが楽しみだなぁ
というかこの喜びどうやって返そうかな
私はそんな事を思いながら、皿洗いをするハルを横から手伝いに入った
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