3. 秋来たりなば
♤
廊下に出て右を向く。
と、ちょうど二組の教室から天城が出てくるのが見えた。
天城と目が合う。
思わず逸らす。彼女の視線には、教室ひとつ分の距離を隔ててなお届く力がある。
足許を見つつ、廊下を進む。
視界に俺のものではない上靴が飛びこんでくる。
立ち止まり、顔を上げる。
またも天城と目が合い、慌てて顔をそむける。
「……」
「……」
「……えー」
と、先に声を発したのは天城だった。
「秋来たりなば冬遠からじと申しますが、つい先ごろまでは
「……ああ。元気だ」
「えー、
「……ああ。天城もな」
「……」
「……」
「……では」
「……ああ」
そして俺は踵を返した。
一組の教室前では、宇佐美と小室が待っていた。
「今日はたくさん話せたぞ」
「天城さんがな!」
二人の声が重なった。
宇佐美は「おまえ『ああ』しか言ってねえよ!」と俺の向う脛を蹴り、小室は「っていうかあれ会話じゃないから!」と英和辞典で俺の頭を殴りつけた。
遠く二組の教室からは「あんた日本語でしゃべんなさいよ!」、「天ちゃんって頭のいいバカだよね!」という女子の声が聞こえてきた。
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