物語としてとても丁寧に編まれた作品、そして、人物の心の動きをとても丁寧に綴った作品でした。
心をかき乱される作品を読みたい私に、作者様がそっと差し出してくださったのがこの作品でした。まさに心をかき乱される作品だったなと思います。
「心をかき乱される」というのにも色々な種類があります。こちらの作品では主人公の俊貴の葛藤や痛み、祈り等を追体験でき、読者である私も読み進めながら彼と一緒になって苦しんだり、傷つけられたり、切なくなったりすることができました。男の子が小・中・高と成長していく中でずっと持ち続けた感情を追体験するわけですから、ものすごい高エネルギーです。時に弾み、時にグシャグシャに潰れるそれを体験するなんて、現実では絶対にできません。貴重な体験をさせていただいたなと思います。
作中で丁寧に綴られている心の動きとは、時の経過に伴う感情の変化のことだけではありません。身体と共に成長していく精神面のことでもあります。それらが描かれているからこそ、私は彼らの人生によりリアルな厚みを感じたし、「二年」という隔たりがあまりにも大きく、むごいことを一層強く感じました。
作者様の作品を読むといつも、絵画を描くようにして小説を書く方だなと思います。実際に作中には様々な色彩が登場するのですが、心を映した描写ひとつひとつも、その綺麗さに感動したり、残酷さに切りつけられたりして、とても美しいと思うのです。また、取り入れたモチーフには意図があり、構図には意味があるということがわかります。なので、感想を書こうとどれかひとつのキーワードに触れると、せっかく「物語」という一番美しい形をしているものをバラバラに分解してしまうような感覚がして、上手く自分の中にあるものを出せないのです。
一番美しい形をしているものは、一番美しい形をしたままで。実際に読むことで、丁寧に編まれた物語を感じてほしいなと思います。
二人の距離が徐々に縮まっていく物語ではなく、段々開いていく物語。それでも暗いばかりではない、ドラマたっぷりの、心に良いものが残る素敵な作品でした。
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初恋という言葉の初々しい響きとは全く異なる、重たい痛みを持って描かれた物語です。
主人公の心象描写はどこか自虐的で、それでも少しだけ希望を持ちたいという甘さも垣間見えて、すべての感情が痛々しいほどに繊細です。その思いは緻密に描写された風景にも映し出され、読んでいる側にも苦くて辛い潮風の味がします。
その恋は一点の灯台の光なのか、それとも呪縛なのか。手離せない感情をボトルメールに例え、それを流せないままに抱き続ける主人公の姿が切ない。
サンドイッチ、灯台、海といった小道具やモチーフが全編で重要な役割を果たしていて、その使い方の巧みさや物語の構成にも唸ります。
一文一文に隙のない、美しい文章で綴られる初恋の記録。言葉の重さを噛みしめながらじっくりと読みたい作品です。