特別章1-8 ツンデレなあたしと友達と初恋
「……か、
マンションのロビーのエントランスで、待ち構えていたあたしを発見すると、
「
そして、腕を組んで問いかけたあたしの質問に
「え、えっと……
おそるおそる、と言った感じで、
「ええ、その通りよ。あたしは今日、
「へ、へー、そうなんだ」
どうしてか、とぼけるように答える
何で、そんなオドオドしてんのよ、と文句を言いたくもなるけれど、
だったら、
「あんた、
「うっ……それは……」
元々、嘘を吐くのが下手なので、反応だけですぐに分かった。
「ってか、
「ええっ!? そ、そんな……
もちろん、そのこともあたしは
――だけど、あたしは
☆ ☆ ☆
「…………えっ?」
だって、あたしたちがこれから観る予定だったのは『首切りゾンビと死霊が潜む街』という題名からして恐ろしい作品のはずで、あたしが今持っているチケットに書かれている国民的ニチアサアニメである『魔法少女マギ☆キュア』の劇場版作品ではなかったはずだ。
そして、あたしが固まっていることを不審に思ったのか、
「どうしたの、
と、あたしが固まっている理由に心当たりがあったのか、あたしではなく
「
「当たり前じゃん。だって、
「
「あっ、やべっ!?」
「なんで……? どうして、
「そ、それは……」
しまった、というように、
「ってか、やっぱり隠す必要なんてないって! もう話しちゃったんだし、
そう言って、呆然とするあたしに向かって、
「えっとね、
でも、どうしてそんなことを
いや、
あの朝の教室で、あたしと
そして、あたしがずっと、そのことで悩んでいたことも……。
「ごめんなさい、
「それは……」
「ごめんね、
あたしは、まだ状況が整理できていなくて、謝る2人にどう声をかけたらいいのか分からなくなっていた。
「ってか、
しかし、あたしの沈黙は
「でも……そんなことしたら……」
緊張が解けたからなのか、あたしにしては珍しく、本音が出てしまう。
「2人に……嫌われちゃうと思って……テニス部のことだって……一緒に入ろうって、約束してたのに……」
あたしは、2人から視線を逸らすようにして、消え入りそうな声で呟いた。
そう、あたしは2人と一緒にテニス部に入るって言ったのに、自分の都合で人形演劇部に入部した。
別にそのことに後悔なんてなかったし、
それが本当に嬉しくて、あたしが人形演劇部にいられるのも、彼女たちが背中を押してくれたからだ。
だから、そんな2人の期待に、友達として、裏切りたくなくて……。
「えいやっ!」
「!?」
パチン、とあたしのおでこが、派手な音を立てて弾かれた。
「
「今、さらっととんでもないこと言いましたね、あなた」
「嫌いなものは嫌いって言ってくれていいの! そんなことで
「ええ、もちろんよ」
へへっ、と
その顔を見ていると、あたしが凄くちっぽけなことで悩んでいたんだと思えた。
「……ありがとう。
だから、あたしは精一杯の感謝の意を込めて、2人に頭を下げた。
「いいって、いいって。『クビシソ』は今度、
「えっ!?
「ないない。
「そうですね、私も日曜日は家族がニュース番組を観ていましたので……。
期待を寄せるように、2人はあたしを見つめる。
「……うん! わかった!」
あたしは、そんな2人に向かって、息を弾ませながら、話し始めた。
「えっとね『マギ☆キュア』は、普段は普通の女の子なんだけど、魔法世界にいる『カオス』っていう敵と戦うときは変身して魔法少女になるの。それでね――」
映画が始まる時間まで、あと10分。
その間、2人はずっと、あたしの話を聞いてくれたのだった。
☆ ☆ ☆
「……そっか」
あたしの話を聞き終えた
だけど、次のあたしの台詞で、
「ってか、何であたしの好きな映画が『マギ☆キュア』だったのよ! 別にホラーじゃなかったら他の映画でも良かったでしょ!! そもそも、あたしが『マギ☆キュア』観てたの小学生までだって!!」
「ご、ごめん!
まぁ、
っていうか、
「……ごめん、
だけど、
「もう、いいわよ……それに、そんなこと言うために、あんたを呼んだわけじゃないし」
「えっ?」
「…………ありがと」
あたしは、不思議そうに見てくる
「あんたが
だって、あの
それを嬉しかったと……そう思わないといえば、嘘になる。
「ああ! もうっ! だから、これでお終い! じゃあね!」
なんだか、急に恥ずかしくなってその場を立ち去ろうとした。
「
「ひゃ、ひゃあ!?」
だけど、
「あの……本当にごめん……」
「だから、今日のことは別に……」
「いや、そのことじゃなくて……写真……だよ」
「あっ……」
「その……
「
そうだ、あたしたちは、それが原因で喧嘩をしていたのだった。
それこそ、あたしが勝手に怒っただけで、
やっぱり、気にしてたよね。
絶対、あんたが悪いわけじゃないのに。
ごめん、
あんたはやっぱり、そういうやつ、なのよね。
「……いいわよ。そりゃあ、あたしだって、寝顔とか、その……下着とか見られたのは死ぬほど恥ずかしかったけど……
「……ん? ちょ、ちょっと待って
「な、なによ……」
「寝顔って、何のこと? それに、し、下着姿、って……」
「……は? いや、あんた。あたしのお母さんから、あたしが寝てる時の写真を保存したって……」
すると、
「ち、違うよ! 僕が保存してたのは
「ど、どういうこと?」
「僕にも分からないよ……。と、とにかく、おばさんから送られてきた写真は、公演会があったときの
と、陸は丁寧にメッセージアプリの履歴をみせてくれた。
そして、
それ以外の写真が送られてきた形跡は、どこにもない。
このメッセージアプリは履歴を消すと、ちゃんと『○○さんがメッセージを削除しました』という表記が出てくるので、それもないということは、最初から
ちなみに、これは後日談になってしまうけれど、あたしの寝顔写真を
なので、この事件はお父さんにスマホを日本海に沈めるか、あたしの写真を消すかの2択を選ばせ、無事、あたしの情けない写真はデータのゴミ箱へと葬り去ることで解決したのだが、それはまた別のお話だ。
「じゃあ、
あたしの私服姿ってこと?
でも、どうしてそんな変哲もない写真を……。
「だ、だって……」
すると、陸は、顔を真っ赤にしながら、こう呟いた。
「
「!?!?」
――その瞬間、あたしの心臓が止まるかと思った。
「で、でも! ちゃんと写真は消したから! おばさんにも、履歴ごと消してもらうし……」
「……り、
「はっ、はい!? って、うわっ!?」
あたしは、一瞬で
陸の呼吸音が聞こえるほどの距離。
そんな中、あたしはポケットにしまっておいたスマホを取り出して、天井に掲げる。
――カシャ!
無機質なシャッター音が、マンションのロビーに響く。
「か、
突然のことで、戸惑う
ブブッ、と、あたしのスマホではなく、
「……見て」
「はい?」
「いいから! スマホ! 見る!」
カタコトみたいな指示に、
「……えっ?」
そして、
「……特別に、その写真は保存すること許してあげる! ってか、消したら
そう
「ちょ、
後ろから、
「あら、おかえり
「な、何でもない!」
洗濯カゴを持ったお母さんとは、挨拶もそこそこにあたしは自分の部屋へと逃げるように入っていく。
バタンッ! と乱暴に閉じた扉が音を立てると同時に、あたしはそのままベッドへとダイブした。
そして、恐る恐るスマホの画面を開いて、先ほど撮ったばかりの写真を眺める。
そこに、写っている、あたしと
あたしは、間抜け顔の
あたしが子供のころ、間違って怖い映画を見てしまって大泣きしている間、
――かれんちゃんは、ぼくがまもるから!
自分も泣きそうな顔をしてたくせに、その言葉は、とても安心ができて、胸が温かくなった。
「……約束は、ちゃんと守りなさいよ」
あたしは、スマホを抱きかかえるようにして、身体を丸めて呟く。
「
あたしの初恋は、今もまだ、続いている。
そして、これからも、きっと――。
〈End to Side 華恋〉
Next Side……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます