第48話 甘すぎる僕のお姉ちゃんと僕の告白
「ねえ……さん……」
どうして、ここに姉さんがいるんだ?
いくら姉さんでも、僕がこの場所にいるなんてわかりっこないはずなのに……。
「ごめんね、
そう言って、姉さんは僕が入っていたドーム型のオブジェクトの中へと入って来る。
白いブラウスも雨で濡れて、薄いピンクのスカートだって、下着のラインが見えてしまうくらいにぴったりと張り付いてしまっていた。
髪の毛だって乱れてしまって、せっかくの綺麗な
それでも、姉さんはそんなことを全く気にしていないように、僕を優しく見つめる。
「えへへ……なんだか、秘密基地みたいだね」
姉さんは本当に、子供が遊んでいるような表情で僕にそう告げた。
隣に座った姉さんの肩が、僕の肩に触れる。
どうして、姉さんは傘も差さないで……と、考えた時点で、全てに合点がいった。
姉さんは、僕が家を飛び出したあとに、すぐに追いかけてきたんだ。
でも、いくら姉さんでも男の僕とは足の速さが違う。すぐに見失って、それから僕を捜し始めたのだろう。
雨の中、じっとここで膝を抱えていた僕とは違い、姉さんはきっと、この街中を捜し回ったのだろう。じゃないと、こんなところにいる僕を見つけられるわけがない。
「ねえ、
吐息がかかるくらいの距離で、姉さんがそう呟く。
触れあっている身体から、姉さんの鼓動が伝わってくる。
「私、
「それは……」
確かに、僕は姉さんに構われるのが嫌だった。
だけど、それは姉さんが悪いわけじゃない。僕がただ、子供扱いされるのが嫌だっただけだ。
「私ね、初めて
「嬉しく?」
「うん、だって、こんなに可愛い子が弟なるんだって、そう思えたから。だから、私も『お姉ちゃん』になりたいって思えた」
その言葉を聞いた瞬間、僕の心にまた、ズキンッ、とした痛みが走る。
でも、同時に、凄く温かい感情が僕を包むような感覚が生まれた。
さっきまで、寒くて震えていた身体が、もうなんともないように、ぴたりと止まる。
「私は、
姉さんは、どこかいたずらのバレた子供のように、僕に告げる。
「だって私、昔はすごく泣き虫だったもん。学校でも友達はあまりいなかったし、家でお人形さん遊びをするような女の子だったんだよ。今みたいに、人前に立って何かをすることなんて、絶対にできなかったの。だけどね……」
と、姉さんはそっと、僕の手のひらに自分の手のひらを重ねた。
そして、少しずつ指を絡めて、最後にはぎゅっと、恋人繋ぎのように僕の手を握る。
「『私は、
姉さんは、握っていない反対の手で、僕の顔に触れて、優しく微笑む。
僕を見つめる姉さんの瞳は、とても綺麗で、宝石のようだった。
「私、
どく、どく、と、自分の心臓が鼓動を打つ。
「姉さんは……」
姉さんの知らない、僕の本音。
「姉さんは……どうして、そんなに優しいの? 僕なんて、姉さんに優しくされる資格なんて……」
「んー、それはね……」
姉さんは、いつもように、さも当然のように、こう答えた。
「私が、
ああ、そうか。
やっぱりこの人は、どこまでいっても、僕のお姉ちゃんなんだ。
血が繋がっていなくても。
本当のお姉ちゃんじゃなくても。
この人はきっと、どんなことがあっても、僕を『弟』だと言ってくれる。
「姉さん……」
だから、今日だけだ。
今日だけは、僕も姉さんに本当の気持ちを伝えよう。
――甘すぎる僕のお姉ちゃんに、ずっとずっと伝えたかった、たった一言の気持ちを。
「僕も、ずっと大好きだったんだ。
そう言った瞬間、僕の瞳から、ボロボロと涙がこぼれ始めた。
すると、お姉ちゃんは僕を包み込むようにして、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「うん、私も、
そう答えてくれるお姉ちゃんは、誰よりも僕に甘い。
きっと、僕のこの気持ちは、お姉ちゃんには届かない。
だけど、それでいい。
だって、お姉ちゃんは僕のお姉ちゃんで、大好きだと言ってくれているのだから。
僕はもう、これ以上のことは望まないことにした。
ただ、今だけは……。
もう少しだけ、僕は姉さんに優しく抱きしめられながら、止まらない涙を我慢せずに泣き続けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます