第10話 衝撃

クライマックスシリーズとは、ペナントレースでAクラスに入った3チームによる日本シリーズ出場をかけた戦いだ。


東京ラビッツは優勝しているので、2位と3位の勝者と戦うセカンドステージからの登場となる。


今日はセカンドステージの初戦。


落ち着こう、落ち着こうと思っているが、気持ちが落ち着かないらしく、いつもよりも早い時間に目が覚めてしまった。


テレビをつけると、いきなり「東京ラビッツの現役選手が監督批判を激白!」という衝撃的なテロップが目に入ってきた。


「週刊誌の文芸によると、監督に他の選手よりも成績が上で勝利に貢献しているにも関わらず、嫌われているために出場機会が減っている。そして、采配批判が書かれています」


よりによってクライマックスシリーズの初戦にこんな記事をぶつけてくるとは。文藝砲め!!


采配批判の一例をテレビのアナウンサーが述べているが、なんだか聞き覚えがある。


これは、俺がスマホに書いていた内容じゃないか・・・


落としたスマホが文藝に渡ったのか?

それとも、ビールかけのときに盗まれたのか?


慌てて、ネットでこの件について検索してみると、早速、掲示板で犯人探しが行われていた。


こういうときに出て来る人たちは仕事が早い。

レギュークラスの該当する選手が3名ほど、既にピックアップされていた。もちろん、俺もその中に含まれている。


「こんなに分析できるなら、他に活かせばいいのに」


そんな恨み言をつぶやきながら、そっとスマホを閉じた。


コンビニへ文藝を買いに行ってみるか?

情報源が俺ということは文藝には分かっているから、もしかすると、既に張り込みされているかもしれない。迂闊な行動は避けた方が良さそうだ。


いつも以上に慎重にならないと。


今日はいつものナイターと同じ時間に家を出て、同じ時間にドームへ入った。


ドームのロッカールームに入ると、空気がぎこちない。


野球界では先輩批判はご法度だ。

ましてや監督批判なんて許されるわけがない。


みんなが誰が情報源なのかを知りたがっているが、決して口には出さない。


試合前のウォーミングアップ、練習をしたが、正直言って上の空だった。


そんな状態だったからなのかもしれないが、いつもは先発マスクを被るエースの菅井の登板にも関わらず、スタメンから外された。

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