ベテラン捕手 山西充のつぶやき

樹彦

第1章 NPB編

第1話 ベテラン?

昨日の試合では久しぶりにタイムリーを打てた。

俺の打率は2割5分なので、多くあることではない。


プロ野球選手といえども人間だ。メディアにどのように書かれるかが気になってしまったので、昨日の試合後はよく眠れなかった。


早朝になり、目が覚めたので早速ネット記事を検索する。こういうのをエゴサーチというらしい。


普段、メディアには批判や酷評ばかりでプラスのことが書かれないのでこんなことはしないが、タイムリーを打った翌日は別物だ。


「山西、意地の決勝打!」

「ベテランが意地をみせた」

「いぶし銀の活躍」


こんな見出しが躍っていたので、少し顔がニヤける。


「まだまだベテランでもないし、いぶいてもないんだけどな。そもそも、いぶしって何だ?」


そんな独り言を言いつつ、少し高揚しながらネット記事に目を通した。


俺の名前は山西充(やまにし みつる)。東京ラビッツで正捕手を務めるプロ野球選手だ。今年でプロ9年目の31歳。


自分としては、まだベテランだとは思わないのだが、キャッチャーというポジションということもあり、屋台骨、縁の下の力持ち、いぶし銀などと、脇役みたいなイメージになってしまっている。


同期入団で同い年の遊撃手である吉本はスーパースターとして扱われ、ベテラン臭を一切出していないのに、自分の扱いはあんまりだ。まあ、吉本は男の俺から見ても爽やかな感じの良いやつなので仕方ない。


そんな事を考えていたら日が高くなってしまっている。


今日からは西日本遠征だ。早く荷物をまとめないといけない。それでは!

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