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 ご飯を食べ終わったあと、二人で後片付けをして、それから遥はノートパソコンの置いてある小さなテーブルの前の椅子に座って、そこで仕事を始めた。いつものように画面を見ながら遥は無言でキーボードの上にあるボタンをかちかちと軽快な音を立てて叩いていく。

 夏はそんな遥の姿を椅子の上に体育座りをしながら、ぼんやりと眺めていた。

 夏は遥に聞きたいことが山ほどあった。

 いろんなことを聞いてみたかった。

 遥ならそれらの質問に的確に答えてくれるという確信もあった。

 でも、できなかった。

 だから夏はじっとしていた。

 小さく、丸まって防御の姿勢をとっていた。

 そんな夏の様子を遥は背中越しに伺っていた。

 きっと遥はすべてお見通しなんだろうな、と夏は思った。

 わかった上で夏がどう行動するのか、夏の抱えている問題をどう解決するのか、それを見守っていてくれるのだ。

 そんな遥の気持ちが夏にはきちんと伝わっていた。

 だから夏は遥に答えを聞くことができなかったのだ。

「よっと」

 それからしばらくして、夏はわざとらしく声を出しながら、久しぶりに床の上に足をつけて立ち上がった。

 遥の様子に変化はない。

 夏はかつかつと歩いて遥の部屋のドアの前まで移動した。

 そこに夏がたつとドアは勝手にスライドして開いた。

 そして後ろを振り返った。

 遥はずっとかちかちと音を立ててキーボードを叩き続けている。

「お散歩に行ってきます」

 夏が遥を見ながら言う。

「いってらっしゃい」

 言葉だけで、遥が答える。

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