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 夏はお風呂場でシャワーを浴びて汗を流した。

 使用した下着とジャージを丸い宇宙船の窓のような扉をした洗濯機の中に放り込み、新しい下着と服に着替えをした。洗濯機が夏がなにもしなくても夏がその場を離れると勝手に回転運動を始めた。便利だな、と夏は思った。

 夏の着替えた下着は自分で持ち込んだ、夏お気に入りの下着だったが、新しい服は遥が貸してくれた服で、それは普段夏が自分では絶対に着用しないような真っ白なワンピースだった。慣れない感触のひらひらに夏はちょっとだけ困惑する。

 そのワンピースはどことなく雛の着ている服にそっくりだった。その点も、少しだけ気になった。

 木戸雛。

 遥が大切にしている、遥と同じ名字を持った真っ白なお人形。

 夏は雛の部屋で、雛の代わりに人形のようにしてガラスの壁の向こう側に座ってじっとしている自分を想像した。もちろん、ガラスの壁の向こう側には遥がいる。

 遥はそこからじっと夏の姿を観察していた。

 遥の隣には遥の服を引っ張って、遊んで、とせがんでいる雛がいた。

 お風呂場にある大きな鏡に自分の姿を映したとき、その可愛らしいワンピースは自分には似合わないと思ったが、それでも夏はくるりと優雅に回転をして、スカートの裾を柔らかく膨らませてみたりした。

 それからにっこりと微笑んで笑顔の練習を一度した。

 それから夏はお風呂場をあとにして、遥の部屋まで移動する。

「おかえり」遥が言う。

 部屋の中には遥がいた。

 不思議なことに遥は、夏のようにお風呂に入ったわけでもないのに、なぜか夏と同じように着替えをしていた。遥の選んだ新しい服は、夏の着ている服とまったく同じもので、それは真っ白なワンピースだった。

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